<「福岡市は早急に完了してほしい」と国>
建前では住民の安全・安心を至上命題にしながら、調査に6年もかけて完了しないということについて、福岡市はどう考えているのだろうか。
九州地方整備局は、「最初から調査対象として福岡市自身が挙げた物件ですので、責任を持って調査を完了していただきたい。福岡市には早急に完了してほしいと繰り返し繰り返し申し上げている」としている。
300件以上も調査対象にしたのはサムシングの耐震偽装の重大性を印象付けるため、または、いつまでも「シロ」にせず、疑惑があるかのように店ざらしにするため調査をサボっているとしたら、サムシング代表だった仲盛昭二氏にとっては、「人権侵害もはなはだしい」と映るだろう。
サムシング関与物件が「第2の姉歯」扱いされるきっかけは、福岡市による3件の発表だった(いずれも後に安全宣言が出された)。その発表があったから、サムシング関与物件の情報提供がよびかけられ、構造計算書の調査が始まった。「マッチ・ポンプ」なら、火をつけても消火をするからまだしも、問題を投げかけておきながら消しもしないのは、住民の安全・安心確保を放棄したと言わざるを得ない。消防士が火をつけて消火をしないようなものだ。
もちろん、偽装を発見した福岡市が発表したことは、住民の安全のために国民に正確な情報を開示することであり、やむを得ない。建築基準法の建物の安全性を確保する趣旨にかなう行為だったと言える。
しかし、構造計算書の不整合自体は、2007年の法改正前には一貫性は求められていず、違法ではなかった。
裁判所の専門委員を務めた経験を持つ構造計算の専門家は、構造設計に当たって、地盤のボーリング調査、意匠設計、構造設計が同時にスタートし、意匠設計や地盤の想定に変更があると、途中から計算し直した出力結果などの部分だけ差替えて付けることは珍しくなかったと話す。
国交省のサンプル調査でも、調査対象389件のうち構造計算書に不整合があったものは59件、15%にのぼった。不整合があることはよくないが、調査が完了したサムシング関与物件では不整合は11.2%に過ぎず、むしろ他の設計事務所よりも"成績がいい"と言える。
しかも、繰り返すが、調査が完了したサムシング関与物件544件(12年1月31日時点。所有者側が構造計算書を厳密に再検証しないまま補修した1件を除く)すべてで耐震性が確認された。
仲盛氏はこう語る。
「構造計算書に不整合があったことは初めから認めています。しかし、サムシングが構造計算を手がけた約800件の建物はすべて、安全性を検証しています。100%耐震基準を満たしています。自分の名誉にもかかわるし、住民・オーナーにマンションの資産価値を低下させたくないので、1日も早く調査が完了することを願っています。住民たちの安全・安心の確保という自治体の責務を福岡市は果たしてください。耐震偽装の疑いをかけておきながら、何年間もさらし者にするのは人権蹂躙のなにものでもありません」
福岡市は調査が2年間進捗しない理由を示し、報告しない建築主等には罰則の適用を検討して1日も早く調査を完了させるべきだ。調査完了は、自治体として居住者らの安全・安心を確保するための責務である。
≪ (中) |
※記事へのご意見はこちら