福岡県篠栗町のマンションの住民らが耐震設計を担当したサムシング(株)代表者である1級建築士仲盛昭二氏に損害賠償を求めた訴訟で2月27日、福岡高裁(木村元昭裁判長)は仲盛氏の控訴を棄却した。1審福岡地裁は「基本的な安全性を損なう欠陥がある」として、仲盛氏らに1億7,500万円余の支払いを命じ、仲盛氏が控訴していた。仲盛氏は「ただちに上告する」としている。
判決は、仲盛氏が作成した構造計算書について「マンション主要部分の荷重設定に重大な誤りがある」と認め、設定に誤りのある荷重を前提とする「1次設計(中小地震でも建物が壊れないようにする)」「2次設計(想定以上の地震でも倒壊・崩壊しないようにする)」ともに適切なものといえないとした。仲盛氏の「構造計算上の耐震強度には何ら問題はない」との主張に対し、「裏付ける証拠がない」などと立証不十分と判断。1審で実施された鑑定を採用し、「建物としての基本的安全性を欠いている」とした。
仲盛氏は「1審の誤りについて何も触れていない判決だ。1審の技術的間違いを踏襲している。審理の中で裁判官は1審判決を破棄すると述べたのに、身内をかばった判決内容になっている。構造上安全だとする根拠がまったく無視されている。構造建築士業界のためにも、構造設計技術上の間違った判決内容を正したい」と、コメントした。
住民側の代理人弁護士は「1審原告側の主張を基本的に認め、建て替え費用を認めたものだ」と指摘。このマンションに住む会社員(61)は「こちらの言い分を認めたので満足だが、マンションはそのままなので納得いかない」と語った。
住民らは当初、マンション販売会社や施工建設会社に対して瑕疵担保責任や不法行為に基づく損害賠償を請求していたが、1審で、それぞれ訴訟外や訴訟上の和解が成立し、約1億2,700万円を受領している。判決によれば、建て替え費用は約6億7,900万円。
住民らは、マンション管理組合の総会か報告集会を開き、今後建て替えるか修繕するか方針を検討する予定。
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