<シェールガス革命、日本への恩恵はまだ>
Shale(頁岩)層の中に埋まっているガスやオイルを掘削技術の革新によって、天然ガス、オイルを回収し、採取することが可能となった。技術が確立したことにより、シェールガス、シェールオイルの生産量が急増し、安い天然ガス、石油が供給される時代に入った。
これまでアメリカは、産油国からエネルギーを輸入して、長らく貿易赤字に泣いてきたが、今後、シェールガスが、アメリカのエネルギーを自立させ、輸出を支える柱となり、輸入国から一挙に、エネルギーの輸出国へと転換を遂げる。国際エネルギー機関(IEA)では、2017年までにアメリカが世界最大の産油国になり、天然ガス生産でも3年以内にロシアを抜くという見通しを示している。
このところ、アメリカでは製造業の輸出が増加。シェールガス革命による安価なエネルギー供給がアメリカの製造業復権を支えている。
一方、世界一の天然ガスの埋蔵量を誇るロシアは、シェールガス革命のあおりを受け、主要取引先であった欧州への輸出が減少。北方領土問題で、ロシアが態度を軟化させているのは、天然ガスの輸出先として日本をつないでおきたいという事情もある。
エネルギーの依存度が高いままの日本にとって、割高な液化天然ガス(LNG)の輸入価格を少しでも引き下げ、いかにシェールガス革命の恩恵を取り込むかが、経済全体にとっての課題でもある。
割高なLNG価格が貿易赤字の最大要因
1月、財務省が発表した財務統計では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支において、1兆6, 294億円の赤字となった。石油製品、LNGなどの輸入が増加し、過去最大の貿易赤字に転じた。割高なLNGの輸入による燃料費の高騰が主な原因となっている。東日本大震災後、火力発電所を稼働させるために、LNGの需要が急激に増え、足元を見られて割高な価格でLNGを輸入せざるをえなかった。震災前、日本のLNGの輸入額は約3兆円だったが、震災後、輸入量増加と調達価格の高騰で約6兆円にまで上がっている。
アメリカでのLNGの生産価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり2.5ドルであるのに対し、日本の輸入価格は17ドル程度。日本への加工・輸送費を含めても、かなり割高な価格で輸入している。この割高な価格は「ジャパンプレミアム」と呼ばれ、ここさえ解消できれば、貿易赤字額を減らすことができる。
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