昨年末の衆院選で政権を失った民主党。7月の参院選では、政党支持率の低下に歯止めをかけ、野党としての影響力を維持できるかどうかが問われる。福岡県選挙区(定数2)では、公認候補の公募が行なわれ、党員・サポーターの投票によって選ばれる。3月2日、3日、県内4カ所で予定候補2名による公開討論会が行なわれた。
<二大政党の復活か、第3極か>
2日、福岡市博多区のホテルで開かれた公開討論会。会場には、前衆院議員や地方議員を含めて約150名の党員・サポーターが集った。最初に行なわれた参院選に向けた決意表明、前衆院議員の野田国義氏(54)は、「自民党に代わる政権交代可能な政党は民主党しかない」とした上で、八女市長4期16年の地方自治のマネジメント経験を活かし、「本当の意味での地域主権、そして道州制の実現」を目指すと訴えた。一方、昨年末の衆院選で広島1区から出馬して落選した経済評論家の野中幸市氏(49)は、「民主党の政策は間違っていない」とし、有権者の信用を取り戻すために「文書・交通費含めた国会議員の報酬3,000万円を5割カットし、襟を正すべき」と訴えた。
質疑応答では、最初に、衆院選における民主党大敗の原因が質問された。野田氏は、「政権与党としての経験のなさ」をあげ、党のマニフェストに「財源の問題でなかなか実行できない内容があったことも否めない」と明言。一方の野中氏は、マニフェストについて「財源を理由することは許されない。赤字国債を発行してでも実行すべき」とし、消費税増税を最大の敗因とした。
参院選における選挙戦略についても両者の見解が分かれた。「日本維新の会とみんなの党の統一候補が出た場合、当選する可能性がある」として、「国会議員が身を切る改革」で第『3極との差別化』を考える野中氏。これに対し野田氏は、「物価高騰で暮らしが困窮する。アベノミクスは大企業・富裕層を向いた政策」「格差の問題を生み出した、新自由主義・市場原理主義に戻すのか」などと述べ、第3極を意識せずに『自民党に対抗する二大政党』としての民主党の役割を強調していく構えを見せた。
経済政策については、野田氏が、民主党政権で「失業率5.4%が4.2%に、有効求人倍率0.43%が0.8%に、実質GDP490兆円が514兆円に、需給ギャップ30兆円が15兆円に、新築戸数67万戸が97万戸にそれぞれ改善したが、PRが足りなかった」と、説明。公共工事52兆円の補正予算を組んだ自民党に対し、「私が市長だった1990年代、結果的に残ったのは借金だけであったことを教訓として覚えておくべき」と、述べた。野中氏は、「政治主導だから自民党の経済政策は持続しない」と独自の見解を述べ、「(民主党政権に)有権者は約3年3カ月しか猶予をくれなかった。もう少し長い目で見てほしかった」と語った。
社会保障・福祉については、野中氏が「少子高齢化を止めるための1人につき3万円の子ども手当て」を第一の政策とした。野田氏は「自民党との大きな対立軸」とし、「消えた年金、地域医療の崩壊も自民党政権時に起きた。人・くらし・地方を大切にする政治は間違っていない」と語った。
最後の質問された教育のあり方・制度については、野田氏がまず、「高校授業料無償化、少人数学級は民主党政権で実現した」とし、「現場に入った教育、多様性に応じた教育が求められている」とし、「自治体の首長は忙しくてなかなか手が回らない。教育委員会、教育長に任せることも必要」と語った。野中氏は「子どもにとって、教師の言葉の暴力が一番影響ある。体罰について統一のルールが必要」との見解を語った。
党の厳しい現状に対し、終始重く、一言一句を噛み締めるような口調で意見を述べる野田氏に対し、熱意を前面に出して時折、強い口調で意見を訴えた野中氏。会場に集まった党員・サポーターはどう受け止めただろうか。公認候補を決める投票は3月13日で締め切られ、同16日に開票および発表が行なわれる予定。なお、両氏への質問は、メールまたはFAX(関連リンク参照)で受け付けている。
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