＜中小企業の苦難の時代、だからこそ『全員の英知』を結集する戦略＞
　「博多の女（ひと）」といえば、博多菓子工房の二鶴堂を代表する名菓で、福岡県民で知らない人はいないだろう。バウムクーヘンのなかに小豆さらしあん入り羊羹が入り、洋と和が織り成す独特な味のハーモニーは、地元のみならず、全国にファンがいるほどだ。

　「博多の女」は2012年に発売40周年を迎え、息の長いロングヒットを続けている。また、同年８月にはこれを記念した「博多の女（ハチミツレモン味）」を発売。パッケージには、有名なイラストレーターの中村祐介氏のイラストを起用するなど話題となった。
　同社は「博多の女」のほか、定番の「栗饅頭」、生チョコをお餅で包んだ「中洲deショコラ」などのヒット商品を数多く抱える。なかでも、焼き芋にすると甘みが出る品種（高系14号）を使用した「博多ぽてと」は、「博多の女」と並ぶ同社の３本柱の１つで、橋本由紀子代表が開発した自信作の１つ。由紀子社長は同社の創業者・橋本富市氏の長女で、69年４月にロイヤル（株）に入社後、３年間修業したのちに同社に入社した。主に経理畑を歩み、2000年９月に同社の代表取締役社長に就任。

　「伝統」と「創作」という創業者の想いを伝承して、消費者に喜ばれる博多ならではの菓子づくりを行なってきた。「博多ぽてと」の大ヒットの仕掛け人でもある由紀子社長であるが、社長自身も世代交代を考える時期に入り、社長の個人力だけで会社を牽引することに限界を感じていた。さらに、景気が低迷し中小企業に逆風が吹き荒れるなか、「今後、どのようにして企業を存続させるか？」と自問自答した際、出した答えは「全員経営」であった。

＜卒業生の卒業作品が新製品、PRまで含めて自分たちで実践＞
　09年10月期決算前の同年９月に、スタッフを若手精鋭軍団に育て上げることを目的に「次世代経営塾」という社内勉強会をスタートした。同社は本社兼工場と佐賀工場があり、従業員はパートを含む175名が在籍している。そのなかの精鋭20名を毎年選抜し、期間は１年間で毎月１回、本社に各種コンサルタントを講師に招いて行なう本格的な勉強会だ。20名の精鋭はそこでリスクマネジメントから商品開発、商品PRなどを学ぶ。

　精鋭らは卒業の際、同社の新商品の製造開発、広告宣伝、PRに至るまでを自分たちだけで考え、それを責任を持って実践する。記念すべき１回目の卒業作品が「博多バームスティック」だ。この商品は女性初の佐賀工場長の丸内寛子氏が主体となって商品を開発。「博多の女」の製造過程で出るバームクーヘンの切れ端をヒントに30種類の試作品をつくり、大当たりした。

　「博多バームスティック」は10年９月１日に販売され、たった２年で1,363万本を製造、売上高６億8,000万円を売り上げたメガヒット商品。新商品のヒットの目安が年間１億円であることを考えれば、爆発的に当たったと言えよう。
　JR博多駅、福岡空港を中心に群雄割拠の福岡・博多の土産菓子業界で、今年（12年）、JRのキオスクの「博多お土産ランキング」で３位に入り、「るるぶ.comの2012年九州土産グランプリ女性部門」で堂々の１位に輝いた。そのほか、11年にモンドセレクションで銀賞を受賞するなど、次世代経営塾の卒業作品が短期間で、同社の定番商品にまで上り詰めている。

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＜COMPANY INFORMATION＞
■（有）二鶴堂
代　表：橋本　由紀子
所在地：福岡市東区馬出6-15-21
設　立：1952年12月
資本金：4,100万円
ＴＥＬ：092-621-8881
ＵＲＬ：http://www.nikakudou.co.jp

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