＜高校１年中退で博士号を持つ＞
　曺氏にはソウルのホテルで取材した。彼は高校１年で中退している。「学校で勉強するのは無意味である」という強い信念を抱いてきた。ソウルでIT開発で有名なニューテック企業付設研究所に就職するには、MBA、博士の資格が必要であった。そこで、入社に必要な条件・資格をすべて独学で取得した。結果、18歳でこの研究所に就職した。厳しい研究所所長に鍛えられたことで、曺氏は大きく成長したし、すばらしい仲間たちに恵まれた。同期生の大半は起業して事業主になっている。

　学校嫌い＝勉強しないということではない。自分１人で図書館に籠って勉強に集中していたのである。いつも「どうにかして自由奔放な図書館をつくりたいな」という希求の思いが募ってきた。「図書館にある膨大な情報を有効に活用できないものか？」と問題テーマが具体化してきた。「図書館に蓄積されている情報を収集・分析する。データを加工してあらゆる産業にプラスを与える方策」を自問自答していたそうだ。到達した結論は『検索エンジンをプラットホームにする』ということである。

＜新時代の波動を掴む＞
　詳しくは別項で述べているが、「セマンティックWeb」とは1998年にティム・バーナーズ＝リー氏によって提唱された技術であり、「情報リソースに意味（セマンティック、semantic）を付与することで、人を介さずに、コンピューターが自律的に処理できるようにするための技術」と定義されている。曺氏は1998年に会社を起こしているが、当初の会社名が『（株）セマンティックス』であった。これを見ても、会社を設立した同氏の並々ならぬ意気込みが伝わってくる。まさしく『時代の波動の先端を掴むぞ！！』という野心である（現在、社名はキューロボに変更）。

　曺氏は単なる時代の波動を掴む流行を追っかけたのではない。この新時代の検索エンジンの開発に12年間、没頭したのである（2008年完了）。その成果が認められて、マイクロソフトに呼ばれて2010年からシリコンバレーに滞在する。滞在期間は2011年までの１年半におよぶ。「シリコンバレーで学ぶものはない」との結論に達して帰国する。途中、マイクロソフトからの事業買収の打診があったが、それは即座に断った。

　曺氏がシリコンバレーの若手ベンチャー企業たちを観測して下した評は次の通りである。「彼らは事業家ではない。彼らが開発したソフトに資金ファンドが高い値をつけないと事業存続が不可能だ。また彼らの、資金を得たならば事業から離れるという行動パターンには同調できない。私の事業哲学は、生涯現役を貫くことだ。最悪、資金ファンドが相手してくれなくても事業存続の手立てを実践してきた。資金力に屈服して事業放棄することはあり得ない。これは私にとって死を意味するに等しい」。力まずに淡々と語るのが曺氏の身上か！！

　要は曺氏は、経営の根幹に触れる『日銭を稼ぐ』ということを常に意識しているということである。研究員時代に『どんなすばらしいテクノロジーでもあまりにも時代の先端を走っていると潰される、いや相手にされない』ということを痛感した。マーケティングの重要性を会得したのである。「だからこそ自社ソフトが勝負できるまでは食いつなぐぞ」という信念で関連事業で食いつないできたが、今日に至って大勝負の時期を迎えることとなったのだ。

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