主に自閉症など、他者とのコミュニケーション能力が欠如する発達障害が、ここ数年で増加の一途をたどっている。2011年度現在、就学前の子ども2,891人に発達障害の疑いがあると、7日に開かれた福岡県議会における松尾嘉三県議の質問に対して福岡県が報告した。
発達障害の原因究明および発達障害とされた児童への支援を訴える松尾県議は、政務調査によって、福岡市の年次推移データで、発達障害は1989(平成元)年33人であったものが2011年には647人と、22年で約20倍に増えているデータを示した。
また、福岡市立子ども病院や福岡市立心身障がい福祉センターの医師らが日本小児神経学会に提出した調査報告には、07年から厚生労働省により本格的に推進された『早期母子接触』に原因がある可能性が高いという結論が含まれていたという。
なお、データから、福岡市の発達障害の数は07年約260人、08年約300人、09年350人と、11年までの数年で急増していることがわかる。
『早期母子接触』とは出産してすぐ、分娩室で母親に抱かせるというもの。福岡市の産婦人科医・久保田史郎氏は、「母親の胎内と分娩室の温度差により、低体温症を招き、結果それが脳機能の損傷につながる」と、警鐘を鳴らす。また、米国カリフォルニア大学(UCLA)で発達障害を研究するオーニッツ教授は、自閉症は脳の障がいとの研究結果を発表しているという。
昨年12月、文部科学省の調査で、東日本大震災の被害が大きかった3県を除く、全国の公立小中学校の通常学級において、6.5%の子ども(40人学級で2、3人の割合)が発達障害の可能性があるとされた。しかして現在もなお、「原因は不明」とされており、増加を防ぐ手立てが何ら講じられていない状況だ。
発達障害は、自閉症に含まれる社会性や想像性の欠如といったアスペルガー症候群など、外見だけではわからないことが多く、福岡県は今後、「早期発見のための情報提供をしていく」(小川知事)としている。発達障害を防ぐための原因究明とすでに発達障害を抱えている子どもへの支援という2つの課題に取り組むためにも、まずは実態の把握が必要である。
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