3月10日、東日本大震災から丸2年を前にした岩手県陸前高田市では、市の主催で追悼行事が開催された。その前日、大津波にも耐え唯一残ったことで復興のシンボルとなった「奇跡の一本松」の復元記念式典が延期されることが決まった。
弊社取材班は、3月10日、一本松のある高田松原を訪れた。8.5メートルを越える大津波にも耐え抜いた「奇跡の一本松」を見ようと、県外からも一般の人たちがつめかけ、盛んに写真撮影を行なっていた。
追悼会場である同市立高田小学校からほど近い高田松原の一帯は、大津波に襲われて一本松のあった松林や同地域にあった陸前高田ユースホステルなどが押し流された。
唯一残った一本松は、昨年5月に枯死状態が確認された。市は一本松の保存事業を、大手ディスプレイデザイン会社の㈱乃村工藝社(東京都港区)に委託。昨年9月の伐採後、県外で防腐作業などが行われ、根元部分は2月12日、幹部分は今月2日に設置された。
高田松原は、1940年には国の名勝に、同64年に陸中海岸国立公園に指定されている。クロマツとアカマツからなる松林は、岩手県の防潮林にも指定されていた。夏には海水浴客でにぎわい、多くの動物や希少植物が存在していたことで知られていた。
一本松をめぐっては、震災から丸2年を迎える3月10日前後に樹木を囲む足場を取り外し、同22日に復興のシンボルとして記念式典の開催や夜間のライトアップが予定されていた。
しかし、住民から「以前と形が違うのでは」との指摘があり、8日に伐採前の写真などを見比べることで据えつけた枝葉の角度がずれていたことを確認。工事が一部やり直しとなることが急遽決定した。
復元作業のミスが生じたことについて、所管している陸前高田市役所都市計画課は、「受注企業が現在調査中であり、報告書が出るまでわからない」と回答。「作業は順調に進んでいたので、非常に残念です」とコメントしている。
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