<東京で開催する意義>
20年のオリンピックの開催が、次の世代に何を残すのか。招致の成否は、アスリートやスポーツ関係者たちの未来を大きく変えることになる。
招致にあてる予算は、16年招致の際の約半分の75億円程度。お金と手間がかかる招致レース。「ここで失敗なら今世紀の日本での開催はない」ともささやかれている。
20年にオリンピックが開催されれば、東京だけでなく、日本全国に需要をもたらし、生産誘発額などの経済波及効果は約3兆円と見られている。関連の雇用誘発は、1,500万人以上はあると見込まれている。国立競技場の改修、交通インフラの再整備など設備にかける費用も多大だが、成功した時の効果も大きい。16年に用意した開催準備基金約4,000億円を活用し、既存の設備を生かしながら、成熟した大都市での、手堅く、コンパクトな開催をアピールポイントにして、投票権利を持つIOC委員に訴えていく。
<人的な"遺産"を次世代に残せるか>
高度経済成長の上昇機運のなかで行われた64年の東京五輪は、日本に首都高速や鉄道、国立競技場など多くのオリンピック・レガシー(遺産)を残した。五輪を契機に、日本をさらなる経済発展へと導いた意義は大きかった。
今回、招致に成功すれば、選手村など新たな施設への設備投資、交通インフラの再整備など、ハード面にも多大な費用をかけることになる。ただ、2度目となる20年は、ソフト面の人的なレガシーをいかに次世代につなげられるかが重要になる。ハード面よりもむしろ、人的な遺産を次の世代に残していけるかどうか。
20年に向け、若きアスリートたちや指導者が育つ。スポーツ界の人材だけでなく、世界的なイベントを開催する人材や、運営に携わる多くの人が、五輪という一大イベントに関わったという共有のキャリアを持つことが、次世代への遺産となるのではないか。
スポーツの力が日本を活気づけることになるとともに、13年の五輪招致活動から20年の開催、その後に至るまでの"人"のつながりが、20年に開催する大きな意義となる。
猪瀬直樹東京都知事は、「若い世代に熱意を持ってやってもらった。われわれが次の世代に送らなければならない義務がある。ここからが正念場」と折り返し地点を過ぎての意気込みを語った。残り半年での、ロビー活動、国際的なPRがカギを握る。運命の9月7日、東京は、アルゼンチン・ブエノスアイレスで未来をつかめるか。
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