＜経営会議（３）＞
谷野は、
「今日は５つの議題があります。それでは決議事項一番目の取締役会に付議すべき事項であるＦ支店（仮称）新設の件を、担当のネットワーク開発部長から説明をお願いします」
と述べると、担当部長は、
「この度、具体的な候補地が見つかり、現地調査を行なうとともに、北九州地区本部および関係部とも協議を行いました。また４月15日の店舗検討委員会においても新設店舗の候補地に相応しいという意見で一致しましたことから、本日の経営会議にお諮りするものです」
と述べ、候補地について具体的な説明をしていった。
その内容は、
（１）候補地は小倉南区で面積は1,358m2（約411坪）。
（２）小倉南区から苅田町及び行橋方面までの法人取引を推進・管理する店舗。
（３）店舗規模は４号店とし、５年後の預貸和は270億円以上とし、将来的には３号店を目指す。
（４）総人員は16名とし県外新設店舗であることから次長職を配置。従って、男子行員は支店長、次長、指導職３名、一般男子行員４名の９名で、女子行員は７名（うちパ－ト２名）。
（５）候補地は購入による自己所有。
（６）前面道路の路線価は坪512,000円であることから坪520,000円～560,000円の価格帯で交渉する。
（７）建物については他の同規模店を参考に２億1,500万円、動産備品関係で5,000万円とした概算の合計では、約５億円。
（８）スタート時の計数は預貸金とも50億円とし、５年後の平残で250億円を計画。
（９）採算は５年目に単年度黒字を予想。
（10）競合する他行は福岡銀行、西日本銀行、福岡シティ銀行の３行。但し、西日本銀行と福岡シティ銀行が統合を予定しており、新たな取引先を開拓・獲得できるチャンスは十分にある。
（11）候補地周辺は再来年の開港を目指している北九州空港（苅田町）の建設に合わせて道路整備が進んでいる。
（12）実施時期としては、平成17年度下半期に新設を予定。
とするものであった。最後に担当部長は、
「詳しい内容については別紙の資料をご参照願います」
と述べ説明を終えた。
議長の谷野頭取が、
「以上説明がありましたが、ご質問はありませんか」
と問うと、他の役員から２～３の質問があったが、北九州本部長の石野専務による経営戦略上の出店説明を受け、全員がＦ支店開設について「異議なし」と賛成。第１号議案である新設店舗の設置案件は承認された。
谷野は、
「ご承認を頂き有難うございました。次の第２号議案は95期計算書類の承認、および第95期連結財務諸表の承認についてですが、担当部長より説明をお願いします」
と述べると、担当部長は、
「第95期計算書類（案）は、４月27日開催の臨時取締役会において、また、『付属明細書』は５月７日開催の定時取締役会におきましてご承認頂いております。その後、記載内容を一部追加、変更致しましたので、その部分のみをご報告し、説明に代えさせて頂きます。詳細についてはお配りしております書類をお目通し下さい」
と説明したが、出席した取締役からの質問はなかった。担当部長は会議場を退出していくと場内は一気に緊張感に包まれ、いよいよ次の議題は焦点の『役員人事案』へと移っていった。
※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。
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