先月、2週間ほど、資源エネルギー外交の一環として中東諸国を訪ね歩いた。外務大臣政務官として主として欧州と中東地域を担当していたご縁である。なかでもサウジアラビアでの体験は強烈であった。同国の外務省で日本人初の講演を行なった後、砂漠の民ベドウィンの酋長のもとを訪ねた時のことである。
それまで何週間も雨が降らず、ラクダの乳で喉を潤していたとの話を聞いていると、突然、あたりが薄暗くなり、無数のトンボが出現。ラクダが交尾まで始める騒ぎなった。その直後から急に雨が降り出したのである。ベドウィンたちからは「恵みの雨をもたらしてくれた遠来の日本人」ということで、引きとめられ大歓迎されることになった。
電気も水道もない。道路もない砂漠のど真ん中のテントで、ナツメヤシの実とラクダのミルクを振る舞われながら、鷹やラクダを自由に操る遊牧民の生活、彼らの自然や宇宙観、家族や動植物に対する思いを聞くことができた。焚き木で火をおこし、ラクダの肉に舌鼓を打つことになった。しかし、日没の時間に合わせて、聖地メッカに向かって皆で祈りを捧げる。1日5回の礼拝を欠かさない、宗教的価値観に基づく言動には深い感銘を受けたものである。乾燥地での生活において「水一滴は血一滴より貴重」と言う。あらためて水の重要性を噛みしめたものである。
言うまでもなく、世界的な水不足が深刻な問題をもたらし始めている。水源を巡る紛争や対立も激化しつつある。しかし、「ピンチはチャンス」との発想でこの水不足を新たなビジネスと受け止め、技術の力で乗り越えようとする動きも各地で見られるようになってきた。
たとえば、2008年オランダで開かれた科学技術サミットにおいてオランダ人の発明家ピーター・ホッフ氏は「ウォーター・ボックス」と名付けた新商品を展示し、栄えあるベーター・ドラゴン賞を獲得した。欧州を代表する電機機器メーカー、フィリップスのCEOジェラルド・プレイステーリー氏から「最も将来が期待される革命的な発明」と認定する賞状と賞金を受け取った。
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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。
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