中国政府はこのほど、青少年の健全な成長を妨げる内容の小説や出版物に規制をかける通達を出したという。その分野のなかに、青春文学やファンタジー小説などが入っていることが、一部の業界で物議を醸している。
政府の国家出版局は中高生などが気軽に読めるという青春文学小説(ライトノベル)などを出版する業界に向けて、青少年読者の精神が向上するような出版物にするよう要求する通達を出した。そして、青少年の成長を良くない方向に持っていく作品として、「高級車と美女」「若者の恋愛や同性愛」「超能力や霊力、輪廻などの唯心的観念」などについては取り上げるべきではないとしている。
この通達に対し、ファンタジー小説や学園モノの小説を出版している一部の業界では戦々恐々となっている。中国版ツイッターの微博などでは、「学園ラブストーリーはもう書けない」「事例に挙げられた要素を除いたファンタジーはありえない」などとする、今回の通達に対する否定的なコメントがさっそく挙がってきている。
中国のテレビ業界関係者によると、以前は学園ドラマや恋愛ドラマなどもたくさん製作していたが、政府の検閲を乗り越える必要があり、せっかく高い金をかけてつくったドラマでも、政府から「NO」と言われると「御蔵入り」にならざるを得ない。仕方なく、政府が必ずOKを出す、反日感情をあおるような「抗日ドラマ」分野にシフトしているという。中国のテレビドラマの大半が「抗日ドラマ」になっているのは、こうした事情があり、業界の発展を妨げるとの懸念もある。
今回のお達しがどこまで強制力を持つものか、出版業界の発展を妨げるものになるのかどうかはこれからの動向によるが、インターネット上では、「ファンタジーな抗日小説にすれば切り抜けられるか?」などと、すでに抜け道を探す書き込みも出始めている。
※記事へのご意見はこちら