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「私がやります」~南大隅町長、核のゴミ収賄疑惑(4)
社会
2013年3月14日 11:07

 「福島の事故がなければ誘致を続けていた。私たちは命拾いした。それなのに森田(俊彦)町長が町民にウソを言って誘致を続けているのが許せない」。複数の関係者が口を開いた。

<勉強会直後、六ヶ所村視察の誘い>
 ある関係者は、取材に対し、こう語った。
 「町と町議会が勉強会を開いたことが報じられて、ニュースを見ていたら、税所(篤朗)町長がなぜ誘致したのかと問い詰められて、『町議会も同意しています』と答えていた。おかしいな、勉強会をしただけなのに、なぜそこまで言うのかと思った」。
 今までに高レベル放射性廃棄物最終処分場候補地として報道されたのは、福井県和泉村、高知県東洋町、鹿児島県宇検村など、いずれも過疎の自治体だった。しかし、名前が挙がると反対運動が起こり、いまだに候補地すら決まっていない。それほど危険な施設である。
 名前が挙がっただけで反対運動が起きてきただけに、誘致にのめりこんでいても「勉強しているだけです」とシラを切るのが普通だ。実際に、勉強会を開いただけだったのに、あえて「議会同意」と発言したのは、何か事情があったからに違いないと、この関係者はみている。
 しかも、この関係者は、勉強会の後、ある人物から「六ヶ所村に行ってもらえないか」との申し出があったと明かす。「私は、行くなら自分のお金で行くと断った」という。

 では、税所前町長が今も、森田俊彦町長の裏から糸を引いているのだろうか?
 この関係者は、それは違うという。「勉強会の直後くらいに、税所町長が『森田商工会長が「町長の立場ではやりにくいから私がやります」と言った』と話していた。旗を振っていたのは、当時から、森田町長(当時は商工会長)だよ」。

<「誘致するために町長になった」>
syoukasi.jpg 南大隅町で誘致の動きが蠢いている「高レベル放射性廃棄物最終処分場」とは、使用済み核燃料を数万年以上にわたり人間の生活環境から隔離するため地下300メートル以上の安定した地層に処分する施設だ。
 使用済み核燃料といっても、福島第一原発事故の核燃料プールの危機が示すように、核分裂は止まっても猛烈な熱を出し続けるので、長い年月にわたって冷却をし続けなければならない。無毒化する技術は開発されていないうえ、核燃料ウランの1億倍も危険な放射性物質に変わっているため、人間の生活環境から遠ざけるしか方法がない。日本では、さらに厄介なことには、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出した後の液状の廃棄物になる。国の基本方針では、これを固めて(ガラス固化)、冷却のために30~50年貯蔵した後、地層処分するとしている。

 「核のゴミ」最終処分場誘致をめぐって、森田町長はどこまで関わっているのか。原社長との関係、東電とのつながりを探るうちに、ほかにも証言する複数の関係者が現れた。
 森田町長の疑惑は、モーターボート譲渡だけではなかった。
 関係者によれば、森田町長は当選直後の2009年5月、東電に行って、勝俣会長に会っていた。議長ら町の有力者が同席していたという。
 「森田町長は勝俣会長に『核廃棄物処分場を誘致するために町長になった』と言った。同席した人が『そこまではっきり言い切ってびっくりした。まだ勉強の段階なのに』と話していた」。

<森田町長も飲食接待受けていた>
 別の関係者は、ある原発視察旅行を語った。09年の町長選挙で森田俊彦氏が第2代南大隅町長に就任した後のことだ。
 オリエンタル商事の原幸一社長に連れられて、森田町長の友人3人が、福島の原発と青森の六ヶ所村を視察したと話す。上京した後、福島へ行き、福島第1原発、第2原発を見学して、いったん東京に戻って1泊。翌日は、六ヶ所村を視察して青森県から鹿児島へ空路で帰途に着いた。「旅費は全部原さんが出した」というのだ。
 ところが話は、民間人同士の視察旅行にとどまらなかった。
 関係者によれば――。東京では赤坂プリンスホテルに泊まったが、福島からホテルに到着したら、森田町長がそこにいた。「私らは町長がいるとは思わなかったけど、日程を合わせて上京してきたんでしょうね」と振り返る。一行は、森田町長と一緒に、夕食を共にし、さらには六本木のクラブで飲んだ。クラブでも森田町長が一緒だった。一行の1人が、原社長が飲食代をゴールドカードで支払ったのを見ていた。
 森田氏が現職町長になってから、原社長から飲食接待を受けたという証言だ。

 森田現町長は、税所町長時代から当時商工会長として「核のゴミ」最終処分場誘致に深く関与し、町長になってからは、飲食接待やモーターボート譲渡など収賄疑惑が生じるほど、ずぶずぶの関係が築かれていたことになる。

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(つづく)
【特別取材班】

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