<過剰報道で風評被害が拡大>
福島県の風評被害は、テレビや新聞など、大手メディアの報道による影響が大きい。一部のマスコミは、福島県農産物が基準値を上回る放射性セシウムを計測すると過大に報道し、「福島県産は危ない」というイメージが日本全国に植え付けられてしまった。
しかし、「ふくしまの復興のあゆみ」(福島県東日本大震災復旧・復興本部:1月28日)によると、12年4月以降の放射能検査で基準値を超えた食品点数は、玄米で0.0007%、野菜・果実で0.09%、畜産物で0%、山菜・きのこで8.2%と、山菜・きのこ以外は、0.1%以下になっている。こうした報道はほとんどなされていない。
読者や視聴者が飛びつきやすいニュースを扱い、話題を集めるために大げさに報道し、1社が報じると他社も便乗してさらに過激になるというマスコミ報道の構図が、風評被害を拡大させている。
放射線量についても、危険区域や警戒区域以外は放射能が低く、いわき市や会津地方などは0.1マイクロシーベルト(μSV/h)を下回る地域もあり、場所によっては東京とほとんど変わらない数値を計測している。現在は「福島県が危険」なのではなく、「福島県の特定区域だけが危険」なのである。
放射線量が全国と変わらない地域で育てられた、基準値を下回る農作物が、「福島県産」というだけで敬遠されてしまう。
この状況は、東日本大震災後の海外の輸出規制に似ている。世界では、福島第一原発の放射能の影響を懸念し、東北だけでなく、日本全国の農作物や食品に対して規制をかける国もあった。この海外の反応を知って「大げさだ」「日本の地理をわかってない」「西日本は影響ないのに」と多くの日本人が思ったはずだ。
これと同じ現象が福島で起きている。福島の会津地方の位置は、日本に置き換えれば九州のようなもの。「福島の地理をわかっていない」「特定区域以外は安全なのに」という県民の声が聞こえてくる。
輸出規制に苦労した関係者や、海外の反応に疑問を持った日本人は、風評被害に苦しむ福島県民の気持ちが理解できるのではないだろうか。風評被害は福島県の復興に大きな足かせとなっている。一度根付いたイメージを覆すのは困難だが、現状を正しく伝えることが、その一助となるだろう。
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