<「賠償にも柔軟性を」>
東京電力との交渉にも、苦労が続く。「人の手に負えないものを扱ってきた企業としては、危機管理体制があまりにもない。大企業のおごりがそうさせたのではないか。東電には、何回も言っているが、そこを改善してもらわないことには、また同じようなことが起こる。元に戻すことができないから被災者には賠償金でということになっているが、その対応にも柔軟性がない」と、東電の体質を批判。被災者に支払われる賠償金の対応にも、柔軟性を持つように要望した。
お金はいらないから元の飯舘村に戻してくれ、故郷を返してくれというのが、多くの村民の願いだろう。残念ながらそれはかなわない。
「6種類ぐらいの賠償金があって、賠償が進んでいるものもあれば、進んでいないものもある。進んでいないものの中の一つに、土地、建物に対しての賠償金がある」と菅野村長。東京電力は、申請者の名前で登記をしていない土地、建物には、賠償金を出せないと言っているという。飯舘村の農村部では、持っている土地の登記をしていない人もかなりいた。登記をしていても、父親の名前だったり、祖父の名前のままで登記していたりしている。
「何度も要望を出しているが東電の対応としては、『登記をしていないからダメだ。支払えない』と言って、聞かない」と、土地や建物に対する東電の対応に対して、批判した。「土地や建物の売買であれば、『登記してないからダメ』という対応でも許されるが、東電が起こした事故で汚され、使えなくなった土地、建物に対する賠償。『登記をしていなきゃダメ』という平時の対応は、改めてほしい。必死で、今、交渉している。ここは、引かずに戦わないと、もらえない人がたくさん出てくる」と、菅野村長は粘り強く交渉する決意をしている。
<復興への戦いは続く>
原発事故は、多くの人の生活を変えてしまった。被災者たちの苦悩は震災後、2年を経たいまもなお続いている。
「100点の答えは出せないだろうけれど、ベターに向かって、みんなで力を合わせていくしかない。一人一人に合わせた復興を心がけていきたいと思う」と菅野村長。まだ復興までの道のりは遠いが、これからも、村民の命、暮らしを預かる長として、"何が村民にとって本当の幸せか"を考えていく。
「復興は、スピードアップさせ、日本人の暮らし方は、スピードダウンさせることを勧めたい」と、心を込めて、つつましく生きる「までい」ライフを続ける。
震災から2年、多くの日本人にとっても、"何が本当の幸せか"を考え直すターニングポイントにあるのかもしれない。
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