こうした空気から水を造る機械の開発が盛んになってきた背景には何があるのだろうか。実に驚くべき事実であるが、「大気中には大量の水分が含まれており、その量たるや地球上のすべての河川に流れる水の量より8倍以上も多い」ということ。そのため、湿度が30%以下でも、このウォーター・ミルは十分水分を吸収し、飲み水に変えることができるという。全自動の湿度感知器がついているため夜明けの最も湿度の高い時期に効率的に水分を吸収できるようになっている。
すでにアメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリアでは販売が始まっている。日本でもすでに特許申請が認められているという。気になる値段であるが、1機1,200ドル、約10万円。アメリカのオバマ大統領も感心したというが、はたしてどこまで日本人の味覚に合った水を提供してくれるものか。日本の消費者の反応が気になるところである。
ところで、アメリカのサンフランシスコ市ではペットボトルの使用を職員に対して禁止するという条例を可決した。これも水不足に対する対策の1つと見なされている。そこで、カナダのウォーター・ミルに負けてはならじと、アメリカのエックス・ジエックス社も空気から飲料水を造る機械を完成させ、市場に売り出すことになった。1ガロンの水を作るのに10セントの電気代がかかるが、この機械も空気中の汚れやほこりをフィルターで除去し、浄化処置をした後に飲み水に変えることができるという。
あらゆる種類の空気から水を作り出し純粋で安全な水を生み出すというのがうたい文句になっている。このエックス・ジエックスの販売戦略は一般の水道水が生物化学テロに襲われるといった非常事態を想定したものである。水道水が安全とはいえ、その水源地に有害物質を投入されたり、地震や災害で水道管が破裂するようなケースを想定し、空気中から必要な飲料水を確保しようという発想である。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。
※記事へのご意見はこちら