歴史ある島原そうめんを手がける麺の「山一」の手延べそうめんが、シンガポールのリゾートホテルで営業するヒデ・ヤマモト氏のレストランで採用されることになった。世界的シェフが目を留めた要因は何だったのか。海外進出について代表の殿村高平氏に伺った。
――最初のきっかけはどういうものだったのでしょうか。
殿村 5年前に上海の展示会が始めてです。正直なところ、この時点ではあまり関心がなかったのですが、金融機関の紹介だったのでとりあえず出してみたという感じです。それが思いのほか好評だったので手ごたえを感じました。それとアジアの熱気はすごい。乗り遅れてはいけないなというのを感じました。そこからアジアを攻めてみようと思いました。
――その後、どういう段階を踏まれたのでしょう。
殿村 翌年、台湾、香港、上海に商談に行きました。その時点ではいい話は頂きましたが、最終的なビジネスには至りませんでした。次の年に地域資源の認定を頂いたことで、ジェトロに話を伺いながら香港とシンガポールへ行きました。香港を目指したのは中国市場攻略のためです。
――最初の取引は香港ですね。
殿村 シティースーパーという高級スーパーとの取引が始まりました。
――そして世界的な知名度のシェフ、ヒデ・ヤマモトさんとの出会いにつながる訳ですね。
殿村 シンガポールにある百貨店のバイヤーのご紹介により、ヒデさんのレストランのメニューに加えていただくことになりました。
――有名なホテル内にあるレストランだとか。
殿村 「マリーナベイサンズ」というホテルの中です。2010年にオープンしたリゾートホテルで屋上のプールは世界で最も高い場所にあるプールとして有名です。レストランから下層階のカジノの様子が一望できます。
――その一流レストランに評価された要因は何でしょうか。
殿村 食感とバリエーションだと思います。 当然、現地にも麺はありますが、食感が違うと言われます。製粉の技術やかける手間が違うと思います。「えぐみのないおいしさ」と言葉で評価して頂いています。
また、シンガポールにも冷たいそばを食べる習慣ができてきました。ただし、いま流行っているのは茶そばです。みどり色なのです。(シンガポールでは)緑色が好きな色なんですね。わが社の麺は30種類のバリエーションがあります。手延べうどん、そば、色も定番の白、わかめを練りこんだ緑、むらさき芋の赤、黒ごまなどがあり、それぞれこしの強さと食感が微妙に異なります。こうした選択肢の豊富さはわかりやすいと思います。
――着色しているのではないですね。
殿村 自然の食材を練りこんでいます。こうしたヘルシーさも高い評価を受ける要因のひとつでもあります。
――いつから提供されるのでしょうか。
殿村 今メニュー開発をしているところです。前菜とか締めとかいろいろ試されています。最も効果があるところが判別された時点からメニューに載ると思います。
――情報発信としては影響力が大きいのでは。
殿村 単独レストランですが、大きな宣伝効果は期待できると思います。
――今後のアジア戦略は
殿村 発信力あるシンガポールとその周辺から広げていくということになると思います。ヒデ・ヤマモトさんのところはマリーナベイサンズの単独レストランで納入量は少ないですが、大きな宣伝効果が期待できると思います。ラーメンにしてもシンガポールからタイマレーシアに広がっています。展示会にも各国からバイヤーが集まる。日本文化の入り口としてふさわしい場所だと思います。
――その先の目標をお聞かせください。
殿村 ひやしそうめんの文化を広めていきたいですね。現地の方も、既存のものを手がけても仕方がないとやる気を示してくれています。山一というよりも冷やしそうめんの食べ方、スタイルを浸透させることが夢です。
――進出を検討する企業にひとこと
殿村 わが社も5年かかりました。視察することが大事だと思います。そして、継続することです。わが社は当初中国市場をターゲットにしていましたが、今はシンガポール及び周辺国となっています。また、続けることですばらしい縁ができました。とにかく日本に帰るたびに元気がないと感じてしまう。アジアのチャンスを見逃してはならないと思います。
<COMPANY INFORMATION>
(株)山一 YAMAICHI
代 表:殿村高平 Kohei Tonomura
所在地:長崎県南島原市布津町丙1763-1
設 立:1982年2月
TEL:0957-65-1110
FAX:0957-72-6887
URL:http://www.mennoyamaichi.co.jp/
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