時速370kmを繰り出すピッチングマシン「トップガン」。際立つのはスピードに加えコントロール、操作性などの総合力だ。「エアー式」と言われる従来型と異なるマシンを開発したのは共和技研（株）。産業機械のエアー回路の設計施工を手掛ける企業だ。一見、畑違いの企業がなぜモンスターピッチングマシンを生み出すことができたのか。代表の田中完二氏に伺った。

　――開発のきっかけを教えて下さい。

　田中　クライアントの何気ない一言です。「空気でボールを打ち出せないか」と。当初はピッチングマシンではなかったのです。完成したあとは射的のようにして遊んでいました。遊園地などへの営業も行ないましたが需要がありませんでした。せっかく開発した技術なので、ピッチングマシンではどうかと市場調査を行なったのです。すると少年から大人まで野球人口の裾野が非常に広いことがわかりました。一説にはチーム数は５万とも10万ともいわれています。本格参入を決めて03年に特許を出願（10年に取得）し、徐々に営業に力を入れるようになり、今では売り上げのおよそ半分がトップガンです。

　――昨年放送された対決番組ではトップガンのスピードボールは「どんな早い動きでも撮影できるデジカメ」に捉えられず勝利しました。

　田中　みなさんスピードに目を向けられますが、370kmのボールを打てる打者はいません。ユーザーから評価を受けているのは球筋の正確さやセッティングの容易さなどの実用性です。ノック練習用としてバリエーションの多さも喜んでいただいています。

　そして、忘れてならないのはデジカメも素晴らしい性能を持っていたということです。ボールの形状ではありませんでしたが、映像として捉えられていました。

　――王貞治ベースボールミュージアムにも納入されたとか。

　田中　王貞治会長が756号の世界記録を樹立された際の投球やコースが再現されています。また、その他のプロ野球選手の投球も体験することができます。

　――長年の技術畑での研鑽がトップガンを生み出したのでしょうか。

　田中　実は私は理系出身ではありません。大学は応用経済学科を専攻しており、前職時代は営業を担当していました。それでもJAXA（宇宙航空開発機構）の会議に参加させて頂いて、工学博士の方々と議論をさせて頂き、意見を採用してもらったことがあります。

　――理系出身の卓抜した経営者は散見されますが、文系出身の技術者は訊いたことがありません。

　田中　「できない」ことを理由に仕事を断ったことはありません。できないものをやってきたという自負があります。私が勤務していたバルブメーカーは営業担当者の知識が豊富なことで知られていました。そこにあって私が「わかりません」という訳にはいきませんでした。実際にそこから学びました。不可能と思えることに取り組んだからこそ技術の進歩があるのだと思います。文系なのでできないというのは言い訳にすぎません。

　――様々な応用分野からも活用が広がっているとか。

　田中　先述のJAXAの会議というのは「ヘリコプター搭載将来型消火弾発射装置」の開発のためです。東京消防庁の航空隊が使用するものです。東京スカイツリーや高層ビルで火災が起きたことを想定しています。既存のノズルタイプでは対応が困難らしく声をかけていただきました。実は連絡頂いた当初、弊社の部長（田中慎一郎氏）はいたずらだと思ったようです。東京消防庁から電話があるはずがないと。何度もご連絡を頂いてようやく実感したそうです。先の会議などを経て実際に納入させて頂き、東京消防庁航空隊の消火ヘリに装備されています。　

　――今後の抱負を聞かせてください。

　田中　さまざまなメディアに取りあげて頂いたこともあって、野球チームやバッティングセンターなどへの需要が広がってきました。狭い市場ですが、まだまだ開拓の余地があると思います。ただ、わが社だけで営業やメンテまでこなすのは限界があります。大手スポーツメーカーとタイアップしながら、販路を広げていくことになると思います。また、ピッチングマシン以外の分野でもお役に立てることがわかってきました。地上の消火設備など社会に貢献できる分野を広げていければ幸いです。

＜COMPANY　INFORMATION＞
共和技研（株）
代　表：田中完二
所在地：大野城市仲畑2-3-38
設　立：1983年３月
資本金：1,000万円
ＴＥＬ：092-571-3040
ＦＡＸ：092-572-5932
ＵＲＬ：http://www.pmx-topgun.co.jp/

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