<仕事師として最後の世代>
中園政直福岡市農林水産局水産部長は今年の年賀状には《今年3月末を持って福岡市役所を定年で辞めます》と書いた。ところが2月21日の新聞夕刊には《新副市長候補》と報道された。本人が一番、びっくり仰天したことであろう。生え抜きの一部長が理事、局長を飛び越して副市長に抜擢されるのは異例の人事劇である。福岡市には前例がない。この人事をめぐってさまざまな情報が飛び交っている。まずは取材した裏表を紹介しよう!!
まずは職場内の嫉妬が渦巻く。上級・中級両職の資格を持たない中園氏の昇格には「こんな三段跳びの人事をすれば福岡市の組織が壊れる」と怒り心頭の表情を見せる元三役OB達。「物好きな市長が決めた人事だ」と内心では苛々感を抱いているのだが、クールに装うとしている現局長。筆者からすれば「役人組織に刺激を与え活性化を起こす良策人事だ」と賛同を表す。現実には福岡市の組織内ではどよめきが起きているという。若手職員達は今回の人事には非常に賛同を示しているそうな。
ただ問題なのは(1)中園氏の『契約屋』といわれる専門部署のキャリアが憶測を広めていること、(2)は高島氏の相変わらずの思いつき行き当たりばったりの人事決定手法である。(1)の件は後記するとして(2)から論じていこう。高島氏本人は《平部長を一挙に副市長に抜擢する》サプライズ人事を行ないたかったのであろうが、もう少し配慮があってよかったはずだ。せめて「1月には理事、局長に昇格させて副市長へ」というプロセスを踏んでいただきたかった。しかし、その希望は無理。思いつくまま、閃くままに決定するのが高島氏の得意技である。今回も同様に突然の人事決定を行なった。
他人様、世間様がどう論評しようとも構わない。まずは取りあえず中園氏本人にアタックした、面談したのである。本人は「26日の議会で承諾を受けるまではまだコメントできません」と慎重な姿勢を保持している。だが一瞬にして、中園政直氏は命を受ければ体を張って業務遂行する『仕事師』であることを理解した。昔はこの手のタイプはたくさんいたのだが、もう数少ない。『仕事師最後の世代』といえるであろう。この頼もしさを高島氏が買ったのか!!
<誰が推薦したのか、この人事は?>
「高島氏は意外と他人の助言には耳を貸さない」と側近は証言する。「麻生副総理は別格」のようである。「北九州の中村県会議員の命令ならOK」という巷の話はあまりあてにならない。まず今回の人事のアドバイスは『麻生天の声』という説が流れているが、これはまず当たっていない、外れだ。「高島氏の若手グループが進言した」という説もあるが、中園氏の過去のキャリアから判断して違和感を覚える。若手たちが熱心に押す可能性は薄い。
では一体、誰なのか!!『推薦者は誰、誰なのか!!』という問いには「ゴチャゴチャした博多弁を駆使する人物」と答えておこう。「高島市長!!中園君は貴方のために役に立つぞ。使いなさい」と迫ったとする。そうすると高島氏はこの人物の奨めには意外と素直に聞いてきた(高島氏の本心は別にあるのだろう――)。この核心情報はタダでは教えられない。IB会員にしか公表しないことにしておく。ただ、こういうロートルの市政への影響は封殺しなければなるまい。タダでは動かない。必ず魂胆を持って動く人物であるからだ。
<『契約屋』としての実績が買われた>
高島氏は公共事業入札の汚れには巻き込まれたくないことを信条としている。今後の福岡市の公共事業は地下鉄3号線の大型工事などが犇めいているのである。水面下ではさまざまな輩が先行的に画策に奔走していると聞く。先だってのロートルが「発注の調整のプロがいないと市政は治まらない」と進言したかどうかは定かではない。話を元に戻すが(1)の「どうして中園氏が副市長に抜擢されたのか?」との回答は、『卓越した契約屋能力があるからこそ』ということだ。
取材して驚いたことがある。ある物件で入札をひっくり返された経営者にコメントを求めた。「『あの中園は許せない。敵だ』と怒りの声が発せられる」と予想していたのだ。ところがどうだろうか!!この経営者の発言は以下の通りである。「敵と思っていたのだが、話してみるとこちらの立場をよーく理解していてくれた。話せばわかる器量のある人物である」と高く評価したのである。この証言からも鮮明になるのは「中園氏の調整能力は卓越している」ということだ。
能力の高さは認めるとしても副市長というポストに対する関係者の意見には一考する価値がある。「裏方『契約屋』が表に出てきてどうするのか!!裏方は裏方で役割をまっとうするべきなのに!!やはり高島は組織のことに関してはまったく素人だ」と嘲笑うOBの存在もある。当然、「裏方『契約屋』を副市長に選ぶとは、裏に何かを隠したいのか!!高島市政は?」と調査当局も強烈な興味を示している。
仕事師・中園政直氏は世間の目はいっこうに気にしない。「ただ150万人の市民のために己の業務を遂行するのみ」と割り切っている。
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