福岡県篠栗町のマンションの構造計算を担当したサムシング(株)の代表者だった1級建築士仲盛昭二氏が、自身に損害賠償を命じた福岡高裁判決を不服として、最高裁に上告した。3月12日付。上告にあたって、仲盛氏は「住民不在の裁判」と指摘するコメントを発表した。高裁判決は、構造計算について「マンション主要部分の荷重設定に重大な誤りがある」などとして、損害賠償を命じていた。
仲盛氏は、「専門委員の意見も聞き、時間を掛け議論してきたことが、1%も考慮されていない」と高裁判決を批判。「これからの建築界の為にも、この決定は、覆しておかねばと思い、上告する事を決心致した」としている。
仲盛氏はコメントで「私は裁判において、自分の名誉の復活と住民の資産価値の回復・保全を目的として争っていた」と述べ、「この判決が確定すれば、建築関係者全員が不利になり、訴訟ビジネス関係者を潤す事になり、大変危険である」としている。同氏が危惧しているのは、高裁判決によって、他の建物の構造再検証で行政機関が認めてきた検証方法が完全に否定されたこと。これにより、「安全」の定義に行政と司法で矛盾が起き、今後住民やオーナーを混乱させる懸念を表明。「この矛盾を防ぐために、最高裁で戦う決意をしました」と述べている。
また、1審では「補強すれば安全を確保できる程度の建物としての資産価値は残っている」としていたにもかかわらず、高裁判決は、補修では済まず建て替えるほかないとしたため、「高裁の判決により、住民の資産価値はゼロになってしまった」とも指摘。「住民にとって、一体、何の為の裁判だったのでしょうか?」と疑問を投げかけている。
1審で裁判所が提示した和解金額が40万円だったのに、判決では約1億7,000万円の支払いに跳ね上がった経過については、1審で弁護士を付けずに本人訴訟で裁判に臨み、被告5者のうち仲盛氏ただ1人が和解を拒否、「その強気の姿勢が裁判官の心証を悪くしてしまったのではないかと」としている。
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