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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(12)
経済小説
2013年3月25日 07:00

<経営会議(11)>
 古谷取締役の話を聞いた監査役の大沢は、
「だからそういうことが即再任を拒否する理由になるのかということです。あなた方は本部と営業店の一体感が欠けていると思ったら、取締役なのですから、取締役は取締役会を通じて、代表取締役が、取締役会が決定した方針の通りに業務執行しているかどうか、監督する責任があります。それについて、例えば今まで取締役会で本部と営業店の一体感がまったくないよというようなことを頭取に直言したり、意見具申したりしていたのであれば話は別だが、私はあまり聞いたことがないと言うのが率直な感想です。その辺はどうですか」
と、再び古谷に意見を求めた。

 すると古谷は、
「今までは先ほど申し上げましたように不幸な事件もあり、管理主体であり、リレバンの対応もあり、そういう管理主導ということはあったでしょう。ですからそれらのもとで出てきた中期計画は前向きに実践していきたいということです。それから先ほど申し上げました具体的なことは申し上げたくないのです。ないのですが、具体的なことについては取締役会の場で申し上げませんでしたが、いろいろな場で頭取さんにも申し上げたところがあるのではないかと思います。
それをもう少しはっきり言えば良かったということはあるかもしれませんが、それでも頭取は『男らしく自分の考えを一生懸命やっているだけだ』と言うふうにおっしゃっていました。
 私どもは谷野頭取の今までを否定しているわけではないのです。丁度今回任期満了であり、そうであればこれを機に新しいステップでやろうということで、ご退任を求めているのです」
 と述べた。

 その言葉を聞いた大沢は、
「だからそれは本人が『うん』と言ったらそれで良いが、『そうでないよ』と言っているのだから、おかしいのではないのかと言っているのです。
 つまりあなた方が、『そういうことだから任期満了で退いたらどうですか』と言って、頭取が『わかった』と言えば、そういう論理が通用すると思うが、『そういうことはしない』と言っておられるのです。

 それとあなたは、『今は具体的なことは言いたくないと言われました』が、これはきわめて当行にとって重要な問題です。当行の今からの屋台骨が揺らぎかねない重要な問題です。これについて具体的な問題は言いたくないからという様なことで決議をする、これは大きな問題になります。言うべきことは全部言って下さい。それによって皆さんは判断しなくてはいけない。それだけ重要な問題です」
 と、切り込むように問いかけた。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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