47都道府県5,493人の市民が国と九州電力を相手取って玄海原子力発電所の操業停止を求めた「原発なくそう!九州玄海訴訟」の口頭弁論が3月22日、佐賀地裁で開かれた。原告側は、国の責任について総論を主張し、「原子力発電は、国の積極的関与がなければ、民間事業として採算が取れない発電方式だ。国が民間電力会社に代わって中核的な役割を担って、実質的に原子力発電を操業している」と指摘。また、「安全基準を守っていても福島第一原発事故は起きた。基準を守っていれば安全ではない。九電は積極的に安全だと証明しなければ、安全だと到底言えない」とした。
口頭弁論では、ジャーナリストの三宅勝久氏(47)、一児の母である遠藤百合子氏(42)の2人の原告が意見陳述した。
三宅氏は、福島第一原発事故後、原発をめぐる政官業の癒着問題を取材し、原発を所有する電力会社に経済産業省などの官僚や政治家、学者、裁判官、検察官ら200人以上が天下っていることがわかったと指摘した。
志賀原発1号炉(北陸電力)運転差し止め請求を棄却した判決が名古屋地裁金沢支部で言い渡された当時の名古屋高裁長官だった野崎幸雄氏は北海道電力に天下っている、原発事故後、日立出身の大畠章宏経産相の下で原発輸出に積極的な政策を進めてきた元経産省事務次官の望月晴文氏は原発メーカーの日立製作所顧問に天下っているなど、実名を挙げたうえで、「原発の『安全神話』はこうした不健全な構造から生み出されていた」と批判。「原発のない社会こそが国の圧倒的多数の国民の民意であることに目を向け、公正な判断を」と求めた。
遠藤氏は、「原発の被害にあうのは私たち市民」だとして、「『原子力ムラ』といわれる原発推進」の「一部の専門家だけで被害範囲を決めてしまうようなことが堂々とまかり通っている」と批判した。
「自治体や電力会社の被害予測が信じられない」との気持ちから、玄海原発近くから風船1,000個を飛ばして放射性物質の飛散範囲を調べた結果として、風船は2時間20分後には福岡市西区で、7時間後には徳島県で発見され、遠くは奈良県まで到着したと紹介。九州電力などに原発廃炉を申し入れたら、九電が「放射性物質とガンや病気との因果関係は認められない」と発言したことへの憤りを述べて、「原発を再稼動することは絶対に許してはいけない」「私たち市民は安全で安心した暮らしを送りたい」と訴えた。
三宅氏は意見陳述を終えて、「法治国家であり、裁判官に、法の番人として『法を守れ』というメッセージを込めた」と語った。
※記事へのご意見はこちら