♪ハッピーライフ、ハッピーホーム、タマホーム――。軽やかなCMソングでお馴染みのタマホーム(本社・東京都港区高輪)は3月27日、東京証券取引所と福岡証券取引所に新規上場する。公募と売出による株式発行数は803万株。公募価格は980円。上場により、調達資金での業務拡大や、信用度向上を目指す。
同社は1998年6月、玉木康裕会長兼社長が注文住宅の建築を目的に福岡県筑後市に設立。同県内を基盤として、全国に規模を拡大した。東証、福証への重複上場について、同社は「創業地に貢献するため」としている。株式上場の時期としては、今ほどの好環境はない。絶妙なタイミングでのタマホームのIPO(新規株式公開)は、いくらの初値がつき、どこまで値を上げるかに注目が集まっている。
<アベノミクス効果で新規上場のチャンス>
アベノミクス効果で株式市場に活気が戻ってきた。追い風が吹いたのは、安倍晋三首相が掲げる「大胆な金融緩和」だ。景気を刺激するために、世の中に出回るお金の量を増やそうという政策で、アベノミクスと呼ばれる。
株式市場は"安倍相場"で株価が上昇した。日経平均株価の昨年来の安値は8,238円(2012年6月4日)。今年3月25日の終値は前日比207円高の1万2,546円。昨年の底値より52.3%上昇した。アベノミクス効果である。
株価の上昇でIPOが持ち直してきた。IPOの件数は、ITバブルでピークだった2000年の204社から、09年には19社と激減。市場関係者には「数年内に大量の企業が東証を見捨てて、東南アジアなど海外の市場に行ってしまう」という危機感が強かった。
12年のIPO件数は前年比11社増の48社。2000年初頭に比べればなお低水準だが、リーマン・ショック後の09年を底に、3年連続で回復した。IPOが増えるためには、株価が回復していなければならない。3年程前から準備するIPOは相場が低迷していれば、実施を先送りすることが多かった。アベノミクス効果で、株価が上昇している今年は、IPOの絶好のチャンスなのだ。
<公募価格980円、調達額90億円>
タマホームの目論見書によると、上場時の発行株式総数は2,885万株。このうち、公募株式は803万株(公募が650万株、売出が153万株)。OA(追加売出)分が120万株。公募価格は980円。吸収金額は90億円(OA分含む)。IPOの資金用途は、住宅事業における東大阪店(大阪府)、豊洲店(東京都)の店舗開設のための差入保証金、不動産事業における土地購入資金に充当する予定としている。
大株主の構成は、創業者で代表取締役会長兼社長の玉木康裕氏が52.61%を保有。次いで専務取締役の玉木伸弥氏の8.26%。
<株価収益率(予想)は11.19倍>
2013年5月期の連結業績は減収増益を予想している。売上高は前期比7.5%減の1,568億6,300万円。営業利益は同28.1%増の52億1,900万円、経常利益は同21.9%増の49億9,300万円、当期利益は同3.2倍増の25億2,700万円の見込みだ。
株価が適正であるかを考えるときによく使用される指標に、PER(株価収益率)がある。PERは株価を1株当たり利益で割った数値で、単位は倍である。将来の企業収益に成長が期待されるときには高くなる。割安、割高の銘柄の選定に利用される。
タマホームの予想PERを弾き出してみよう。予想当期利益は25億2,700万円、上場時発行済株式総数は2,885万株、公募価格980円で算出すると、予想PERは11.19倍となる。価格設定は妥当で、割安性が感じられる。他の木造住宅メーカーと比べて、株価上昇ののり代が大きいと判断できる。
<株価の高値は1,500円を予想>
アベノミクスの追い風で、タマホームの初値が公募価格を上回ることは確実だ。株価がどこまで上昇していくのかが焦点になる。主な木造住宅銘柄を参考にしてみよう。
各社の株価は昨年来安値から大幅に上昇している。パワービルダー(低価格住宅)で首位の一建設(東京都練馬区)はグループ6社との経営統合することを好感され、株価は3.6倍に膨らんだ。岩手県が本拠の東日本ハウス(東京都千代田区)は3.1倍だ。積水ハウス(大阪市)、ミサワホーム(東京都新宿区)も2倍を超える。それでいてPERの割高感はない。これまで住宅メーカーの株価は、安く抑えられていたということだ。
住宅メーカーにアベノミクスの追い風が吹く。金融緩和で住宅ローンの金利が下がる。来年4月の消費税増税をにらんでの駆け込み需要が盛り上がる。買い材料になる。その点からすると、タマホームの公募価格980円はかなり控え目だろう。株価の高値は1,500円と予想する。
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