日本の国会にあたる中国の「全人代」(全国人民代表大会)は閉幕したばかりだが、先の全人代で、一人っ子の親たちに関するある議案が提出され、話題となっている。それは、不慮の事故などで、一人っ子の子どもを失った親たちへの対応についてだ。
1979年に始まった一人っ子政策はすでに30年以上が経つ。たった一人の子どもを虎の子のように可愛がってきた両親も平均で50歳代前半になっている。そんな年老いた親たちを残して、不慮の事故などで子どもに先立たれてしまったとき、多くの親たちは生きる希望を失う。生きる希望を失った世帯は年間7万6,000世帯にのぼるという。実に、毎年15万人の年老いた親が生きる希望を失うといわれている。
生きる希望を失った親のことを中国語で「失独者」という。先の全人代では、失独者対策の議案が提出された。彼らには身元引受人がいないため、一般的な老人ホームに入ることはできないという。金を惜しみなく使い、天塩にかけて育ててきた子どもがいなくなり、財産が残っていたとしても、彼らが入ることができる老人ホームはほとんどないという。そこで、失独者専門の公的な老人福祉施設を建設する議案が提案されたのだ。
ある学者は、近い将来、中国の「失独者」の数は1,000万世帯を超えると見ている。それにも関わらず、政府の失独者対策はこれまで全くと言っていいほど、なされてこなかった。今回、失独者対策の議案が提出されたことは、中国政府がようやく重い腰をあげ始めたと言えるのかもしれない。
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