福岡市発注の業務委託をめぐって浮上した業者選定疑惑――。市顧問の会社社長、後山泰一氏が選定委員を務めた業務委託内容のほとんどが、自らの会社の業務と同じだったとして、選ばれた業者との密接な関係が疑われている。特別職とはいえ民間企業の社長が同業他者を選定する立場にあったことが発覚し、市議会関係者や福岡市役所OBから「異常だ」と批判が広がっている。
「異常な形だ」と、局長経験のある市役所OBは言い切った。「業者選定に市長の個人的な友人が入っていては公平性が保てない。歴代市長が、こんな形で業者選定に関係するようなことはなかった」
議員からも批判が出ている。ある議員は「市顧問が9件も選定にかかわり、そのうち8件が同業者を選ぶ業務ということがわかって、昨年2月の市役所改装工事の問題につながった。この工事も、市長のスタンドプレーで決まり、選定委員長が市顧問。補正予算で改装工事が提案され、"反対はしないが、当初予算にないのに突如持ち出してきて、一体なぜだ"と思っていた。これでは市民は誰も納得しない。高島宗一郎市長の市政私物化は、はなはだしい」と語り、市長の責任にも批判を向けた。
「普通だったら課長クラスが選定委員を務める。ところが課長らが市長の言いなりにならないから、市顧問を選定委員に入れたんでしょう」と打ち明けるのは、市役所OBの事情通。「昔は、市長・市議会・市幹部のトライアングルがあって、ある意味では、市長と市職員は利権の一枚岩だった。それが崩れた。高島市長には、利権に手を染めず、議会も職員も敵に回して、傷だらけになっても、改革一本槍で進んでほしかった。そうすれば、市民が味方に付いた。大阪の橋下徹市長のようになれたのに、残念だ」。
別の市役所OBはこう見る。「福岡市役所では、特定企業に発注できるかどうかで出世が決まるといわれてきた。実際に発注結果がそうなったからといっても、本当かどうかはわからない。行政である以上、批判を受けないように透明性や公平性を確保して手続きを上手に踏んできたからだ。高島市長は若いから、業者選定の手法が露骨になってしまった。稚拙、幼稚だ」。
今回取材すると、市役所のなかで様々なうわさを耳にした。
「副市長になった貞刈厚仁総務企画局長の後任人事について、議会(委員会)で議員から『総務企画局長は大事な部署なので、後任は部長級ではなく、局長をあてないといけない』と発言があり、局長は『わかりました』と答弁していた。高島市長は、議会の意向も局長答弁も無視して、部長級から初めて登用した。裏にはなにかあるのでは」「広報の予算は、後山氏が握っていて、事実上彼のOKがないと予算が執行できない」などなど。
単なるうわさに過ぎないといえば、そこまでの話だが、腐敗が広がると、火のないところにも煙が立つものだ。
別の議員は語る。「高島市長と取り巻きによる行政の私物化だ。あまりにもひどい。選定委員になった市顧問を隠れ蓑にしたお手盛り予算であり、市民を愚弄するもの。同業者であれば、選定委員にすること自体が大問題だ。市政が腐敗している」と述べ、6月議会で追及する構えを見せた。
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