時には、人間の家族の一員となる動物たち。その命がおかれている日本の現状をわれわれは本当に知っているだろうか――。
環境省の統計では、2011年度、全国で殺処分された数は、犬が4万3,606頭、猫が13万1,136匹、合計数は17万4,742となっている。122万1,000の犬や猫が殺処分されていた1974年と比べるとだいぶ減っているが、それでもまだ約17万。最近では、保健所に収容された犬を救う宮崎県の実話を映画化した「ひまわりと子犬の7日間」(平松恵美子監督)が上映され、動物たちの命に関わる問題意識が高まっている。
さまざまな団体で殺処分をなくすための活動が行なわれている一方で、日本における動物保護に関する法整備の遅れを指摘する声も多い。今回取材したのは、動物の命を守るための日本最大アニマルシェルターの建設を目指す一般社団法人UKC JAPAN。同法人の細清乃(ほそ・すがの)さんは、「臨床実験の動物を法で保護していないのは先進国で日本だけです。また、ブリーダーの資格も日本にはありません。『無法地帯』と言っていい状況です」と声をあげる。
日本では、販売目的のブリーダーは所轄の保健所へ届出を出すだけでよく、自身もブリーダーであった細さんによると、金儲け主義で産ませた命を粗雑に扱う『繁殖屋』が少なくはないという。「犬のセリ市で、売れ残った子犬たちが大型肉食動物のエサになっていました」「大量に〝繁殖させられた〟チワワたちが、放し飼いされ、満足にエサも与えられず、飢えから共食いをしていたところを保護したこともあります」と、細さんは涙ながらに実体験を語った。法整備がされていないため、行政処分で動物保護をすることもできない。また、保護しても受け入れる施設がないため、保健所の職員が殺処分という辛い役目を背負わされている。
UKC JAPANは、細さんの夫・康徳(やすのり)さんを代表理事として2009年1月に設立。「命が健全に暮らせる社会づくり」を掲げ、これまで数多くの動物たちの命を救ってきた。3・11、福島第一原発事故発生後は、福島県内をさまよう動物たちを保護する活動を実施。1,000の犬や猫、鶏やウサギ、カメなどの被災動物を救った。11年4月22日以降、警戒区域内で保護した数はこれまでに500。現在も、いまだ引き取り手のない動物たちを、神奈川県と京都府に設けられた仮設シェルターで保護している。
同法人が目指しているアニマルシェルターは、ドイツの動物保護収容施設「ティアハイム」をモデルとする。ヨーロッパ最大規模の「ティアハイム」はベルリンに1901年に設立。そこにいる動物たちは期限によって命を奪われることなく、9割以上の動物たちが仲介を経て新しい家族の元へと旅立っていくという。細さんは、「ただ動物を保護するだけではなく、若者の未就職者の雇用につながり、子どもとお年寄りが動物を介して触れ合う施設にしたい」と語る。
現在、同法人は安倍晋三首相の夫人・安倍昭恵氏を名誉顧問とし、ティアハイム建設プロジェクトは、料理研究家の藤野真紀子氏、アーティストのブラザー・トム氏、音楽評論家の湯川れい子氏ら各界の著名人が推薦。同法人の活動の詳細、寄付などについては関連リンクのホームページをご覧いただきたい。
▼関連リンク
・一般社団法人 UKC JAPAN
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