"公立"図書館の新たな姿となるか――。
4月1日、佐賀県武雄市の市図書館が新しく生まれ変わり、書店・レンタルソフト店の「TSUTAYA」を全国で展開するカルチュア・コンビニエス・クラブ(株)(以下CCC、代表取締役 増田宗昭)による市図書館の運営が始まった。
大きな天窓から優しい日差しが差し込む館内では、ゆったりとしたジャズなどのBGMが流れている。本の購入のほか、CDやDVDのレンタルもできる。さらには、読書しながらコーヒーを飲むことも可能だ。賛否両論はあるが、新たな図書館の一日が幕を開けた。
当日、オープン前に樋渡啓祐武雄市長、CCC増田社長らがテープカットを行なった。
樋渡市長は、「本当に市民目線に立った図書館にしたい。新しい価値を創造していきたい。市民の皆さんからの声をドンドンきいて修正していきます」とコメントした。
また、CCC増田社長は「ここに来れば元気が出るよねと言われる図書館にしたい。時間があれば行きたい場所になってほしい」と抱負を語った。
館内に入るとまず目に入るのは2階、天井の位置まである壁一面の大きな本棚。高い位置の本は、あまり動きのない、以前は閉架書庫にあった本が中心で、本を見せるスタイルになった。手の届かない本は館内のブックコンシェルジュに声をかけ、スタッフが取るようになっている。
正面玄関から入ってすぐの場所には、雑誌などの販売用の書籍が平積みされている販売スペースがある。販売スペースは、図書スペースと区切られてはいない。
また、販売スペースのすぐ近くには、スターバックスコーヒーの店舗がある。館内すべてのエリアで飲むことが可能で、食事に関しては指定されたスペースでなら可能となる。
図書館部分は約1,570m2で、改装前に比べ約1.4倍広くなった。蔵書数は約20万冊。読書スペースの座席数も187席から279席に増えた。
館内でゆったりとしたBGMが流れていたが、2階の学習スペースは防音されており、読書や学習に集中できるように配慮されていた。
武雄市在住の60代女性は、「CDなどのレンタルコーナーができて嬉しい。1日中いても楽しそうな場所だと思った。これまで以上に図書館に遊びに来たい」と語る。また、武雄市在住の30代女性は「図書館部分、本屋やレンタル屋の部分と全部一緒になっているので、あちこち行かなくてすみ、したいことがいっぺんにできるのはいいと思う」とコメントした。
年中無休で、開館時間は、従来から4時間延長して午前9時から午後9時まで。CCCのポイントカードであるTカードで貸出が可能で、Tカードで、セルフカウンター(自動貸し出機)を利用した場合は、1日1回3ポイントが付く。市民以外への貸し出しも可能で、宅配返却が可能となる。
民間と組むことで、利便性が良くなり、メリットも多い。しかし、問題も指摘されている。
1つは、個人情報流出の問題。図書カードに「Tカード」を使用することで、その個人情報が流出することが指摘されていた。
そのため、CCC側には、会員番号、使用年月日、時刻、ポイント数の情報だけ提供し、本の返却後すぐに削除することとなった。
なお、Tカードの使用を希望しない人には、従来のカードも選択できるようになっている。
2つ目は、営利性の指摘。著作権法では、本の無償貸与は非営利で行なうこととなっているが、Tカードでセルフカウンターを使用した場合、ポイントが付く。武雄市はこのポイントについて、窓口業務の省力化への協力として加算されるもので、利益誘導ではないとする。
しかし、館内には、販売スペース、レンタルスペースが存在し、Tポイントがこれらの販売促進につながり、営利目的にあたる可能性は否定できない。
樋渡市長が「問題点はドンドンと修正していく」とコメントしているように、今後、この図書館に附随する問題に対する修正も行なっていくことが考えられる。
樋渡市長が従来の図書館のあり方に一石を投じ新たに誕生した、「武雄市図書館」。日本の図書館のあり方を考える呼び水になりそうだ。
※記事へのご意見はこちら