日本発の"列車のクルーズ"となる「ななつ星in九州」について、JR九州クルーズトレイン本部長の古宮洋二氏に話を聞いた。(聞き手・山本弘之)
――プレッシャーを感じているという話でしたが、余裕で今楽しんで作り上げているのではないですか。
古宮本部長(以下、古宮) いやいや、日々プレッシャーが大きくなっています。楽しめたらいいですが、そういう余裕はありません。
――古宮さんとして、これは外せないというこだわりがあったのはなんですか。
古宮 外せないところですか。いろいろな制約がありましたが、九州にはさまざまな、いい温泉の旅館がありますので、そこでどこか1泊していただきたいなというのと、列車に乗るのとの組み合わせですよね。これをどう組み合わせていくかというのが1番難しかったです。それにあわせて観光地をどうするのか。
あとは、お食事です。料理も、「ななつ星」という特別な列車のお客さま専用に研究、工夫していただいていますので、車両に乗ること自体も楽しいと思いますけど、その土地土地で育てられた食材を使ったお料理などを期待していただきたいと思っています。
公表していないことがいくつかあるんですが、まだ最終的に先方さんと話がついていないんで、これ以上は言えないんですが。
<明るくフレンドリーなサービスめざす>
――オリエント急行にはトレインマネージャーがいますが、「おもてなしの心」をうたっている「ななつ星」ではどのようなサービスを考えていますか。
古宮 クルーとも議論しているのですが、一つひとつの技術、ワインをお注ぎするとかお皿を出したりとか、個別の技術を習得させていて、それが終わりまして、3月から、じゃあ我々のサービスをどうしていくか、みんなで話しています。クルーには、航空会社のキャビンアテンダント出身もいます、クルーズ船に乗船していた社員もいます、今までのかたちにこだわるのではなくて、ななつ星にふさわしい、新しいかたちをつくっていこうと、大議論してつくっていきたいと思います。
――クルーは、1編成に何人乗務ですか。
古宮 7両1編成に7人です。客室車両が5両ありますので、1両に1人担当を付けて、そのクルーが掃除もお客さま対応も全部します。
――クルーは夜はどうされるのですか?
古宮 車両の中にクルーが寝れる場所を何カ所かつくっています。7人のクルーが最初から最後まで入れ替わらずにお世話させていただきます。
――かなりハードな仕事ですね。
古宮 夜は交替で寝るような感じになると思います。
――古宮さんが抱いているクルーのサービス、過去にこだわらず、ななつ星にふさわしいものとして思い描いているものはどんなものですか。
古宮 唐池恒二社長からもずっと言われているのですけど、元気、明るさですね。一流のレストランの堅苦しさではなく、明るくフレンドリーな対応をしたいと思っています。
――ひじょうに難しいですね。
古宮 難しいです、難しいです。非常に難しいです。言葉では簡単なんですけど。
<木を使った車両、和を表現した「大人の空間」>
――「160メートル・7両編成」の制約と、コンセプトに照らして、かなり割り切ってつくりあげているように感じました。普通ならあるのに、割り切って外したものは?
古宮 普通はあって外したものといえば、これはいろいろご批判がありましたが、実は「小学生以下のお子さまはご遠慮ください」としています。中学生は一応いいんですけど、申し込まれている方は年配者の方が多いので、ご乗車なされるお子さまはいらっしゃらないのではないかと思っていますが。
あとは、テレビがないことと、喫煙はご遠慮いただいて、オール禁煙としています。
――海のクルーズも、豪華客船に乗るんだけど、乗客もけっして堅苦しくなく、クルー側もしっかりしたサービスだけど、フレンドリー。そういう旅は、日本人はなかなか苦手ではないかと思います。「クルーズトレイン」というコンセプトを、どう広げていきますか。コンセプトがまとまるまでの苦労はどこにありましたか。
古宮 これまで我々、いろいろな列車をやっていますけど、「和」ですね。「日本」というものをいろいろなところで表現したいと思っています。車両も木を使って、和の雰囲気を出しています。1番デラックスな客室には畳を敷いたりしています。
夜のラウンジカーなど、共用スペースでは、ドレスコードとまではいかないんですが、「スマートカジュアル」といって、「ジーパン・サンダルはやめてください」などをお願いすることにしています。かといって、ジーパン・サンダル以外では、ネクタイ着用まで制約するわけではなく、一定の最低限は守って、みんなでワイワイ楽しめるような感じのことをやりたいと、列車内のプランを練っています。
「大人の空間」というのを作りたいなと思っています。
――10月の初運行へ期待が高まりました。ありがとうございます。
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・JR九州クルーズトレイン「ななつ星in九州」ホームページ
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