<リスクコミュニケーションの必要性>
PM2.5による健康被害に関する知見をどのように蓄積していくのか。環境省では暫定的な指針を出すにとどまっており、1日平均、1立方メートル当たり70マイクログラムを基準に、それを超えると、注意喚起の指針「レベルⅡ」となり、不要不急の外出や屋外での運動をできるだけ減らすことを促している。
体育祭などのイベント開催に影響する怖れがあるが、行政が明確なラインを引くのは難しい。基準ができたからといって、これまでは何もなかったのに体育祭などのイベントを中止したり、子どもたちが外出できず、運動できなかったりするのは、逆に子どもの運動不足を招く可能性もある。
行政と、市民の間で、コミュニケーションを図り、「どの程度、リスクがあると見て、行政としてどこから対処するのか」のバランスを取り、意志疎通していくことが必要となってくる。
<中国との技術連携>
国内の濃度に今のところ、増加はないとはいえ、越境汚染を防ぐために、発生源の一つとなっている中国との連携、大気汚染を削減するための働きかけは欠かせない。国として、すでに技術協力、共同研究の取り組みを始めている。
環境省、外務省などが担当し、中国に技術協力を呼び掛け、大気汚染削減への取り組みを強化するように働きかける。環境省の担当者は「中国との共同研究、技術提携は重要なテーマ。環境省では外務省と連携し、2月に人員を中国に派遣して、話し合いの場を持った」と説明した。
経済成長重視で発展を遂げてきた中国。国境を越えてくる「空」の環境汚染は、今後、東アジア地域の解決すべき課題となる。日本は、東アジアの大気汚染の共通理解を形成するために立ちあげられた「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」(日本のほか、中国、ロシア、韓国、タイ、ベトナムなど12カ国が参加)を充実させ、東アジアの大気汚染観測網の強化を呼びかけていく。
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