「黒霧島」をはじめ陰りを見せない焼酎ブーム。焼酎のルーツは諸説あるが、タイ王国から琉球経由で日本に渡ってきたとも言われている。タイがあるインドシナ半島には、日本国内向けに焼酎を製造販売する企業がある。砕石販売を行なう(株)サイタホールディングス(本社:福岡県朝倉市)の子会社・HUE FOODS COMPANY(フエフーズカンパニー)だ。現地代表の黒川邦彦氏に話を聞いた。
――製造業でベトナムに進出したきっかけについて教えて下さい。
黒川邦彦代表(以下、黒川) 今年1月に亡くなった会長の才田善彦(以下、才田会長)が今から20年ほど前の社長時代に初めてベトナムを訪れたころの話です。才田会長によると、ドイモイ(ベトナム語で「刷新」)を掲げ、対外開放政策が始まって5年くらい経過した頃、「本業の砕石事業でベトナムに進出しないか?」という誘いがあり、ベトナムを視察したことがきっかけです。ちょうど農作業の繁忙期で、ハイバン峠を越えてフエに向かう途中、見渡す限り稲穂が拡がっていた光景を目の当たりにしたそうです。「この豊かな米を使って、何かできないかな」と、考え始めたのがすべての始まりと聞いています。
――従来の事業とはまったく異なる分野ですが。
黒川 才田会長は、日本に帰ってからもずっと考え、自分の若い頃からの夢であった酒造りをやりたいと思うようになったそうです。しかし、日本では、新規に酒製造業への新規参入は難しい。才田会長は、「ベトナムだったら何とかなるのでは?」と考えました。
しかし、友人の蔵元の何人かに相談してみたのですが、「ベトナムは気温が高く、日本酒は無理」と言われたそうです。それでもあきらめず、調べてみたところ、日本でも四季醸造(空調設備を完備し、1年を通して醸造する)が行なわれていることがわかったそうです。才田会長は、それらを整備すれば問題ないと確信し、ベトナムの米を使って、友人の蔵元の協力を得て試験製造を繰り返し、「これならやれるのでは?」というところまでたどり着くことができたそうです。その後、投資申請で1995年12月投資許可をいただき、外資100%のHUE FOODS COMPANY(フエフーズカンパニー)の設立に至りました。
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