第1章「ロボスクエア事件」とPR業務委託業務に見る発注制度の落とし穴(中)
<広告業界関係者からの後山氏への痛烈な評価>
ここに後山氏の思考や広告代理店業界からの評価が現れているやり取りがある。
広告代理店と製作会社の関係に詳しいクリエイティブディレクターのA氏は、後山氏と面識がある。A氏がFACoを始めとした行政関連事業の問題点をコラムで指摘したところ、後山氏から「一度、会って話しましょう」と連絡がきたそうだが、それきり音沙汰なしだったという。A氏は調査報道サイト「HUNTER」が報じた「福岡市・マスコミ関連業務委託に新たな疑問」を自身のFacebookに掲載。併せて、かねてより感じていた「FACo」や「カワイイ区」など、福岡市関連事業の業務発注への疑問を記した。
HUNTERが報じた疑問とは、昨年10月に締結されたアイランドシティPR業務に関するもの。受注した2社は公募に応じた新聞社やその系列の広告代理店など8社から選考委員会により選定された。朝日広告社福岡支社315万円。読売新聞西部本社215万2,500円で受注した。4名の選考委員の顔ぶれは、当事者の港湾局の人間は1人のみ。他の3名はいずれも広報戦略室で室長、課長、そして同室の下で市顧問を務める後山泰一氏である。「HUNTER」では、この選考過程の不自然さを指摘。1位と2位の点数が図抜けて高いのみならず、3位以下への4者の評価はバラけているなか、4名とも1位と2位だけ順位が同じだった―など。HUNTERではたびたび、後山氏が関わる業者選定について問題点を指摘している。
すると、音信不通だった後山氏が「一度会って話をしたい」とすぐさまメールでコンタクトを取って来たという。
「誤解していただきたくないと思い、メールさせて頂きました。今色々と書かれてることでは他の方々には理解していただけないかもしれません。(中略)今度は一度話をさせてください」(後山氏のメール)。
併せて、一度携帯電話に連絡したが自身の番号を伝えていなかったと釈明している。これに対しA氏は、「個人的にお話しするより、これだけ公に疑念を抱かれているのですから、まず会見を開かれるのが先」と諭している。しかし、後山氏は会見を実施しないことを表明している。
そして選定過程については、「各社会社名は伏せられていたので、どこの会社がどのような提案があったのかは分からないカタチでした。だから、審査が終わり、後日会社名を知ったレベルです。今一度その時の提案書を見れば思いだすでしょうが、予算の上限が決まっている中では二社とも良い予算配分が良く、広告製作物のクリエイティブ案も効果的に、対象とするユーザーに届く案でした。(中略)費用対効果の面や企画の質が重要な判断でした。(中略)読売も朝日広告社の担当者とは面識もありません。私は私利私欲のために業者選定を行う気持ちは全くないですし、もしろ(原文ママ)今まで悪しき習慣は打ち壊したいと思っております。その考え方で頂いた仕事で自分の職責を全うさせていただいていると思っております」(後山氏のメール)としている。
職業柄A氏は、広告代理店と製作会社との関係をよく知っている。一連のやり取りはA氏からの次の返答で終えている。
「あなたがプレゼン審査やクリエイティブ面で、どの程度の見識があるかわかりません。出自がタウン誌の編集レベルでしょうし、それなら私の方がはるかに見識や経験があると胸を張って言えます。その辺も誤解されている要素ではないでしょうか。最近の行政発注の事業に関わる人間があまりにも『門外漢の輩』が多すぎる点で、誤解を招いているのではないかと思います。FACoにしても、どう考えてもテレビ局のプロデューサーレベルでファッション業界を理解しているはずはありません。行政と彼らの上層部との蜜月によってなーなーで事業を任せる、受けることが誤解を生んでいるのではないかと思います。あなたの言い分を額面通り受け取るわけにはいけません。真意なら公に弁明するべきでしょう」。さもなければ、A氏を含めて市の事業に疑問を抱いている人間の追求が激しさを増すことを予見している。
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