東日本大震災を要因とする福島原発事故などにより、改めて見直されるようになった環境問題。太陽光発電などをはじめとする再生可能エネルギーへの関心が強くなるなかで、人々の生活から必ず出るゴミ(廃棄物)の処理・リサイクル分野にも、改めて注目が集まっている。廃棄物の最終処分、循環資源化などを専門に研究する九州大学大学院工学研究院教授である島岡隆行氏に、これまでの取り組みや今後の廃棄物リサイクルの展望について話を聞いた。
<処理手法と研究分野>
――先進的な技術などを用いて進んできたと言われている廃棄物の処理・リサイクルですが、現在の姿へどのように変化してきたのでしょうか。
島岡隆行教授(以下、島岡) たとえば、私の若い頃は廃棄物の処分場に行くと、段ボールや新聞紙、プラスチックなどありとあらゆるゴミがそのかたちを留めたままで、埋立てられていました。作業の側で、餌を求めるカラスの姿もありました。それから時が過ぎ、国内の廃棄物における焼却率が上昇していったことで、処分場には主に焼却灰が埋立てられるようになりました。客観的に見れば、土地の造成と変わらない風景であり、時代に適応した技術開発、廃棄物の処理手法が進められてきたと言えるでしょう。
――国内における、焼却へ回される廃棄物の割合はどの程度でしょうか。
島岡 家庭から出るゴミを中心とした一般廃棄物に限って言えば、全体の約8割が焼却処理されます。残りの2割はリサイクルに回らない不燃物であり、可燃物であれば基本的にすべて燃やしているというのが、日本の実情です。焼却前の重量のうち、5分の4はガスとなり大気へと消え、5分の1が焼却灰になります。この焼却という中間処理を経て、焼却灰が処分場へと運ばれ、埋立てされます。これが、廃棄物処理の一連の流れです。
――処理の流れが変化していくなかで、廃棄物という特化した分野での研究を行なおうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。
島岡 私自身は、もともと廃棄物の専門家を目指していたわけではありませんでした。学生時代は衛生工学を専門とし、下水・排水などの水処理の研究活動を行なっていました。ただ、当時の日本では、下水道の普及が進められていましたが、下水処理の研究の余地は少ないものでした。
そんななか、周りから勧められたのが、廃棄物分野の研究でした。今後必要とされることは間違いないにも関わらず、研究が進んでいないことがその理由であったと記憶しています。母校である九州大学では、当時廃棄物分野の研究は行なわれていなかったため、日本で初めて廃棄物研究を始めた福岡大学の花嶋正孝教授(現・名誉教授)に教えを乞いながら、廃棄物の収集から適正処理、埋立処分の研究を開始しました。福岡大学の助教授などを経て、2001年4月より九州大学に教授として戻り、現在に至ります。
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<プロフィール>
島岡 隆行(しまおか・たかゆき)
1958年、京都府生まれ。現在、九州大学大学院工学研究院教授(工学博士)、東アジア環境研究機構プロジェクト推進室室長、附属循環型社会システム工学研究センター副センター長、などを兼任。廃棄物最終処分、廃棄物の循環資源化が専門。国内外での研究活動を進めるなか、福岡地区では飯塚市産業廃棄物最終処分場に係る調査専門委員会の委員なども務めている。
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