肥後銀行でまた不祥事だ。4月3日肥後銀行が発表した内容によると、同行30代女性行員が平成22年1月から25年1月にかけて、肥後銀行の名をかたり業務用と称してプリペイド式乗車券「To熊カード」の発注、購入と支払いを繰り返していたという。購入回数は実に86回。取引総額は1億2,836万円にのぼる。本件は今年3月4日、プリペイド式乗車券の販売者である交通局からの問い合わせで発覚したという。30代女性元行員は前の取引分の支払いを後の取引で行なうなどして不適切な取引を繰り返し、雪だるま式で未払い金額が増加、判明したときの肥後銀行の交通局に対する未払い金は2,112万円だったという。この金額が実質の被害となるわけだが、すでに女性の親族らから返還がなされているため、金銭的な被害は肥後銀行にはなく、女性を刑事告訴するつもりもないとのことだ。なお、この女性は3月27日付で懲戒解雇されている。
さて、本件は預金を扱う金融機関としてあってはならないことである。右から左に大金が流れる現場に身を置くと(そんな幸せな経験はしたことがないのだが)、時にそういう悪知恵が生まれ、実行してしまうのかもしれないが、こういった事件が起こらないように社員を教育し、危険回避の仕組みを作っておくのが顧客の財産を扱うプロである銀行の社会的な責任なのではなかろうか。同行は今回の事態を受け止めて再発防止体制を築くとしているが、目下のところ具体的な対策は行なわれていないようだ。
このところ取締役の書類送検など不祥事が続いている肥後銀行。多くの行員たちはまじめに残業も苦にせず働いているはず。一部行員の不適切な行動、一部役職者の無責任な管理で全体の評価を落とすのは、実にもったいないことだ。熊本の経済を支える柱の一本として、その責任を全うするべく、社会規範となり得るような組織になってほしいものだ。
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