9日、総合資源エネルギー調査会総合部会第2回電力需給検証小委員会(委員長:柏木孝夫東京工業大学特命教授)が、経済産業省で開かれ、九州電力が夏の需給見通しの資料を提出した。厳しい節電目標が設定された昨年とは異なり、原発再稼働がない場合でも、安定供給に最低限必要な予備力を確保できる見込みとなっている。
そうしたなかで、国や福岡県、そして九電の節電に対する意識を探ってみた。
同小委員会は、東日本大震災後の電力需給を巡る状況に鑑み、安定供給を確保する観点から、電力需給対策の基礎となる電力需給の見通しなどについて、公平性・透明性を確保しつつ電力需給の見通しなどの検証を行なうとして、本年3月に経済産業省の総合資源エネルギー調査会総合部会の下に設置された。
9日の第2回小委員会には、九州電力から、原発再稼働がない場合の今夏の電力需給見通しに関する資料が提出された。このなかで九電は、今夏の電力需要は、平年並みの気温の場合で1,588万kW、2010年並み猛暑の場合で1,610万kWと想定。これに対し供給力は1,660万kW程度と見積もり、他電力会社からの応援融通受電(最大90万kW)を含むあらゆる供給力対策を織り込むことで、電力の安定供給に最低限必要な予備力(予備率3%程度)を確保できる見通しであるとしている。
九電は、昨年の夏は、需給逼迫が予想される7月2日から9月7日の平日(お盆期間の8月13日から15日を除く)の午前9時から午後8時について、2010年と比べてマイナス10%程度以上の使用最大電力の節電を依頼し、反発も受けた。今年の夏の需要見積りに当たっては、「無理なくご協力いただける節電を織り込んだ」のみで、節電目標は設定されてもいない。
本年5月1日から九州電力は、平均6.23%の家庭用の電気料金値上げを予定しているが、需給見通しを立てるに当たっては、料金値上げに伴う需要減は見込んでおらず、また予測を公表する予定もないという。少なくとも当面は、値上げによる需要減が予想されるはずであり、火力発電所の計画外停止や送電線トラブルの可能性はあるものの、当面、昨年ほど逼迫した状況とはならないものと思われる。
こうした状況に対し、福岡県のエネルギー政策室は、「電力需給検証小委員会での検討を経て、4月下旬以降に政府が夏の需給対策をまとめ、節電要請を行なうことになるので、福岡県としては、それを受けて周知などを行なっていく」との姿勢を示している。節電、電力の効率的利用が、料金値上げの影響の緩和、需給の逼迫回避にもつながるとの観点に加え、節電が発電所をつくらなくて済むことにつながるとの観点から、県民や事業者に節電などを呼びかけていくという。
北九州のスマートコミュニティ創造事業実証実験で、時間帯ごとに電力料金を変更する社会実験を行なったところ、一般家庭の場合に換算すると平均約2割の節電効果が見込まれるという結果が出た。これについて、茂木経済産業大臣は、今年3月15日の衆議院経済産業委員会で、「日本のエネルギー政策の反省の1つが、需要は所与のものだという前提で、いかに供給側を積み上げるかを考え過ぎていたことだ」「カリフォルニアでは、供給が間に合わないときに1時間のうち15分だけ電気を切っていい権利を電力側に渡すとボーナスがもらえる。こうしたことは進めていかなければならない」との答弁を行なっている。
九電は、時間帯ごとに電力料金を変えたり、一時的に供給を絞ったりすることについて、法人向けには随時調整契約を結んでいる例はあるものの、北九州の実証実験のように家庭向けに実施することは考えてはいないという。政府や福岡県は、節電や電力の効率的利用に関しては、従前以上に力を入れてきている感がある。北九州で実証実験が行なわれているということもあり、九電もさらなる節電、電力の効率的利用に向け、力を尽くすべきであろう。
(参考)今後の電力需給検証小委員会の流れ(第1回小委員会(3月22日)資料より)
(参考)電力需給の検証に関する主要論点(第1回小委員会(3月22日)資料より)
▼関連リンク
・今夏の電力の供給力及び需要の見通しについて(原子力発電所の再稼働がない場合)(第2回小委員会への九州電力提出資料)
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