第3章 「広報戦略アドバイザー」という隠れ蓑(前)
<利害関係者なのは明らか>
福岡市の委託業務で選定委員を務めた市顧問の後山泰一氏が受託希望業者と利害関係があった疑いが持たれている問題で、NET-IBは広告業界関係者から「利害関係があるのは明らか。潔白は通用しない」との証言を得た。
選定過程に疑惑がもたれている9件の業務委託の1つである「アイランドシティのPR業務委託」で、後山氏は「(選定した広告代理店2社の)担当者とは面識もない」として関係を否定している。その弁明が事実だったとしても、広告代理店業界を知らない市民をだますカラクリがあった。
「アイランドシティのPR業務委託」は2012年10月公募され、8社が応募し競合プレゼンが実施された。契約相手は、(株)朝日広告社(契約金額315万円)、(株)読売新聞西部本社(同約215万円)の2社。いずれも広告代理店だ。後山氏が代表を務めている会社の業務も、広告代理店業務であり、同業他社を選ぶ関係にあったことは間違いない。今回、問題はそこにとどまらないことが浮かび上がった。
<制作会社との関係「疑われる状態だ」>
証言したのは、クリエイティブディレクターで数々の企業プレゼンに参加した釼英雄氏だ。釼氏はこう語る。
「企画提案の審査といっても、企画書だけ示しても話にならない。クリエイティブ戦略と同時に、コンペの時点で、PR媒体、イベント内容、チラシ、ポスターなどのグラフィックデザイン、ウェブデザインなどの"カンプ"(=comprehensive layout)を当然出します。企画プランは広告代理店が作っても、このカンプやたたき台をつくるのが下請けの制作会社です。広告業界にいながら、この代理店の担当者と面識ないというのもおかしな言い分ですが、後山氏が下請けの制作会社と数多くつながっているのはすぐわかること。プレゼンに関わる途中の構造を知っていれば、利害関係があるのは明らかです」と語った。
今、制作会社は、民間の事業だと制作費が思うように取れず収益が上がらないのだという。広告代理店のような営業力がないため、一番確実性が高い公共事業にアリのように群がっている、と業界の抱える"懐事情"を指摘する。「昔は、コンペで負けても、制作会社に製作費(開発費)が"6掛け"くらいは支払われていた。それでも赤字ですが、今は、『ごめんね、ほかに仕事をまわしとろうが、今回は泣いてくれ』でまったく支払われなくなっています。だから、制作会社は勝つために必死で、なんでもやる状態です。同業者の後山氏にアプローチしないわけがない」と釼氏。
制作会社には、グラフィックデザイナー、ウェブデザイナー、CM制作会社、イベント会社、カメラマン、コピーライター、イラストレーター、ライターなど、広告・PRを形づくる多種多様な業種が何百社とあるという。後山氏は、フリーペーパーの編集やイベントの企画・運営、福岡パルコのPRを手掛けてきており、誰が考えても制作会社と付き合いがあるとみるのが当たり前だ。「どう考えても疑われる状況」(釼氏)だという。
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