アベノミクスにより経済状態が回復しているかに見える日本だが、新しい時代を拓くには「新しい産業の創出」も必要だ。若手経営者に期待されるのは、まさに「新しいものの見方で行動し、産業を構築する力」にあると言えるのではないか。(株)テンペストパワーの代表取締役社長の荒木祥平氏は、車の部品販売をネットサイトで運営し、独特の「仕組み」を取り入れることで消費者の心を掴んだ。今年は海外進出を目標に掲げる同氏に、新しい仕組みをつくるために必要なことを聞いた。
<強みを考えた結果仕組みを知る>
――まず会社設立の経緯をお聞かせ下さい。
荒木 SEとしてIT業界で2年間勤務した後、兄が行なっていたヤフーオークションでの車の部品販売事業を引き継いだのがきっかけです。最初は個人のオークションの延長線上で仕事をしていたので、「自社の強みは」と問われても即答できませんでした。強みをつくることが自分の課題だと感じ、いろいろ考えた結果、「お客さまと取引業者と自社がWin-Winで運営していけるようなネット通販の仕組み」をつくれば独自の強みになるのでは、と閃きました。また、通販ルートを大手サイトだけに頼っていては、万一そのサイトが閉鎖された場合、運営ができなくなるので、自社サイトも立ち上げたいと思っていたところ、提携業者との仕組みをつくって自社サイトに入れて商品を売れば、弊社独自のサービスになるのではないかというアイディアが生まれました。そこでまずは福岡で10店舗ぐらいの業者と提携していただき、その後全国展開を目指して、弊社でできるサービスを動画で配信するなどして提携業者を増やしていきました。最初はウェブサイト制作1つとっても、なかなかうまくいきませんでしたが、試行錯誤を繰り返しながら一歩一歩仕組みをつくっていきました。
――軌道に乗ったと感じられたのはいつ頃でしょう。
荒木 提携業者が100社ぐらいになったあたりですね。ここを超えたあたりで、自社のサービスについて説得力が出てきました。現時点で、大手サイトで提携している業者も含め、約900社と提携しています。北海道から沖縄まで、どこでも取り付け作業が行なえるネットワークが広がりました。また、営業をしているうちに、「車の部品以外の商品も売れないか」という問い合わせが来るようになり、それに対応するうちに、自然と販売の仕組みが組み上がっていきました。この仕組みを武器にできるのではないかと。ネットワークをつなげて、そしてB to B、 B to Cをつなげていくうちに、徐々に自信が持てる仕組みができ上がっていきました。株式会社として運営を始めて7年経った今、海外にも拠点を増やし、仕入れの小売店として弊社を活用すれば、全世界に商品が広がるような、そんな仕組みをつくっていくことを目指しています。
――「提携業者との仕組み」がどのように強みになるのでしょうか。
荒木 提携業者には、メーカーと取り付け業者がいます。お客さまが部品を注文したら、メーカーがそれを直接取り付け業者の工場などに届けるのです。そして、納期が来たらお客さまに直接作業場に行って取付をしてもらうという、たとえて言えば、お客さまが注文をしたら、そのまま完成品を受け取れるドライブスルー感覚の仕組みです。お客さまにしても、商品が大きいので直接自宅に届いたら迷惑でしょう。それならば、取り付け作業を行なうところに直接送っておくようにすればいいという発想です。取り付け業者は独自の仕組みとしては大きな役割を果たしています。数としては、全体のなかで大きな割合を占めているわけではないのですが。また、取り付け業者にとってもメリットはあるのですよ。お客さまが直接訪ねてくれるので、営業先を開拓せずして直接営業ができます。1度作業を頼んだ業者に継続して頼むようになるお客さまは多いものですから。1回の交渉で次の仕事につなげていってほしいのです。
――お客さまにとってはワンストップサービスで楽、業者は営業ができ、メーカーは物が売れる、ということなのでしょうか。
荒木 それに加えて提携業者には、販促ツールとしても得るものがあります。ウェブサイトには業者専用のログイン画面があり、そこにいくと弊社の全商品が全部仕入れ価格になるので、ここを通じて仕入れができます。また、900社がぶら下がっているサイトですから、効果的な営業戦略になります。レスポンスが良いので、小売店として価格メリットが出やすく、安く商品を出していただくケースが非常に多くなっています。
――そこまで仕組みができていると、ただの商社というよりメディアとしての役割が大きいでしょうね。ショップの紹介ができ、文章としてネットに残るので、業者にとっては広告の役割を果たしているのでしょう。仕組みができあがるまでに苦労したことはありますか。
荒木 自分が独自のサービスとしてやりたいことをどう表現すればいいのか、制作側も経験したことがないことなので、どう伝えていけばいいか戸惑ったことでしょうか。結局一つひとつ意見を出し合ったりつくってみたりして、すり合わせを行なうなかで、自分の考え方のクセを相手に覚えてもらうことでうまくいくようになりました。
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:荒木 祥平
所在地:福岡市早良区百道浜1-3-70
設 立:2005年9月
資本金:300万円
売上高:(12/8)約7億円
<プロフィール>
荒木 祥平(あらき・しょうへい)
1977年生まれ。SEとしてIT企業に2年間勤務した後、27歳でテンペストパワーを起業した。2005年に株式会社に。これからは海外展開にも力を入れていく。
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