九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で重大事故が起きた時に放射性物質がどのように拡散するか―市民らが風船を飛ばして調べる風船プロジェクトが4月14日、実施された。同原発近くで開かれた集会には子ども約50人を含む250人以上が参加、午後2時、集まった市民らがそれぞれの思いを込めて、1,000個の風船をいっせいに飛ばした。
風船には、「日本からすべての原発をなくしましょう」などと手書きのメッセージを書いたカードが付けられ、風船を発見した人に連絡を呼びかけている。4月15日正午現在、主催者には続々と発見情報の連絡が寄せられ、14日午後5時50分頃には山口県光市で発見されている。
"この風船が原発をなくすきっかけになりますように"とメッセージに書いた福岡市の立川由美さん(42)は「こうしたアクションがいろいろなものを変えていくことにつながれば」と話していた。
集会のなかで行なわれた大声大会では、「原発なくせ!子どもを守れ!」など、参加者が脱原発を思い思いの言葉で叫んだ。最高記録は104デシベルで、「声が一番大きかったで賞」が贈られたなか、「私たちを守ってください」と叫んだ中学1年生の女子には「印象に残ったで賞」、「原発反対!国民は怒っているぞ。命をかけて、子どもたちを守るぞー」と叫んだ男性には「最高のメッセージで賞」がそれぞれ贈られた。
作家の片山恭一氏が集会で挨拶し、「小説を書いていても世界は変わらない。本当は変わるんじゃないかと思って書いているわけですが、すぐには変わらないみたいで、小説を書いていても虚しさが募ってくる。ですから、こういうところに出てきて、自分のできることを少しずつやっていきたい」と語った。風船に付けるメッセージカードには「一人一人の声を世界の声に」と記しという。
また、福島県から佐賀県鳥栖市に避難している氏家剛氏は、福島第一原発から60キロメートルの郡山市でも野菜への放射能汚染があったなど「生活に重大な問題があると思い、避難した」と紹介し、「放射能という目に見えない問題を目に見えるかたちにするのは重要。危険を訴えることだし、福島で不安を持って生活している人が勇気ある一歩を踏み出すためにもなる」と述べた。氏家氏は、ほかの避難者や支援者らといっしょに、九州の安全な野菜を福島に届ける「九州LOVERS鳥栖」に取り組んでいる。「平和な祈りと、このプロジェクトが必要ない時代がくるような願いを込めて風船をとばしてもらいたい」とよびかけた。
地元の「玄海原発住民対策会議」の藤浦皓氏は「事故福島第一原発も収束が見えないのに、(国は)それを知って再稼働するのか。許されない」と政府を批判。弁護団幹事長の東島浩幸弁護士は「風船が届いた先には、新しい仲間の人たちがいる。原発なくそうの声を上げる仲間たちに届くように風船を飛ばしたい」と挨拶した。
風船プロジェクトは、玄海原発の操業差し止めを求めている「原発なくそう!九州玄海訴訟」の原告らが中心となった実行委員会が主催したもので、昨年12月8日に続く2回目。第1回では、18件の発見情報があり、遠くは約550キロ離れた奈良県まで到達した。実行委員会では、今後、夏と秋にも実施する計画。
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