上海市を走る地下鉄を運営する会社が、このほど「飲食禁止」を盛り込んだ規則をつくろうと、市民に意見公募したところ、9割以上の利用者から「反対意見」が出ているという。今回の禁止規則は、ほかにも「スケートボードやローラースケートの禁止」「自転車の持ち込み禁止」などが挙げられている。いずれも日本人にとっては、ごくごく当たり前のことだが、大都市の上海市で、なぜこのような規則にほとんどの市民が反対意見なのだろうか。
上海ほどの大都市になると、内陸の農村地帯からの出稼ぎ労働者が数多くいる。「公共の場」という感覚を持ったことがない人たちにとってみれば、地下鉄の中での禁止事項にピンと来ないのだろう。中国では、経済格差はモラル格差と言え、その差は大都市では著しい。公共の乗り物は、低賃金の出稼ぎ労働者も多く利用しており、乗車マナーが欠如している光景は度々見られるのだ。
上海と同じく大都市の1つにあげられる天津市。昨年暮れに実施された「地下鉄での乗車マナーで最も許せないこと」についてのアンケート調査では、上位に「車内で痰を吐き散らす」「車内で排泄をする」「車内でタバコを吸う」「車内にペットを持ち込む」など、とうてい日本人では考えられないような回答が出ている。この回答からは、中国人にとってはもはや、地下鉄車内が公共的な場所に位置づけられているとは考え難い。
上海市の地下鉄で「飲食禁止」に反対する市民の声が圧倒的多数を占めるようだが、「においの強い食べ物に限定すべき」「時間帯や車両を区別するべき」などの譲歩を促す意見も出てきているという。今回の意見公募は30日までで、反対意見が多いからといって、施行されないということはないらしい。
大都市・上海で、このレベルの規則が世論によって「否決」されるようでは、国民のマナー向上は、まだまだ先の話になりそうである。
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