最終章 市顧問という"抜け道"を利用、「天の声」と同じ効果か?(後)
福岡市発注の業務委託をめぐって浮上した市顧問の会社社長による業者選定疑惑。市顧問という特別職とはいえ、民間企業の社長が同業他者を選定する立場にあったことは、政治倫理上の問題がある。
<「市民への宣伝」のために発想、パフォーマンスだけで中身がない>
児嶋氏は、後山氏だけの問題ではなく、髙島宗一郎市長の問題ととらえている。
「いつ、どこで、何を目的にしているのかわからないまま決まるのが髙島市長の特徴だ。過程がオープンなかたちで議論されていない。しかも、カワイイ区にしろ、オープントップバスにしろ、思いつき、イベントでしかない。目立つことだけで、個々の事業の前提となる政策に、市民の生活と密着した中身がない」と批判。「『市民のために』と発想しないといけないのに、『市民への宣伝のために』となっている」(児嶋氏)。
福岡市公務員倫理条例は、一般職員や副市長らを対象にしており、市顧問は対象外だが、その目的にはこうある。
「職務の執行の公正さに対する市民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する市民の信頼を確保すること」。
政治倫理条例などが各自治体でつくられたのは、各地で口利きや特定業者との癒着が相次ぎ、政治不信が高まったからだ。福岡市の倫理条例が、特別職の市顧問を対象外にしているからといって、何をしてもいいというわけではない。
逆に市の顧問というなら、市長と同レベルで政治倫理が求められていると言ってもよい。福岡市長の政治倫理条例はこう定めている。
「特定の者の利益を実現するために、職務執行上の有利な取り計らいをしないこと」。
「政治倫理基準に違反する事実があるとの疑惑をもたれたときは、自ら誠実な態度をもって疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明らかにしなければならない」。
市民オンブズマン福岡の児嶋氏は指摘する。「条例の趣旨に立てば、市民から不信を招かないようにするために、市顧問といえども、同じような政治倫理が問われる。抜け道のようなことをやってはいけない」―と。
髙島市長の派手なパフォーマンスのカゲに隠されていた、業者選定疑惑。政策の策定過程を市民1人ひとりが監視を強めないと、福岡市政の腐敗は取り返しがつかないことになる。
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