今年に入ってから、BSE(狂牛病)対策の見直しが急ピッチで進められている。4月から検査対象を従前の生後20カ月超から30カ月超に引き上げる省令が施行されたばかりだが、48カ月超にさらに引き上げようとする食品安全委員会のパブリックコメント(意見募集)が4月9日から実施されている。関係者の話を総合すると、7月とも言われている再見直し後には、補助金対象も絞り込まれ、全国一斉の全頭検査見直しが検討されているという。
我が国でBSE対策がとられるようになってから11年が経過した。EUでは、BSE 感染牛は満11 歳になるまでにほとんど(約97%)が検出されることもあって、政府は、今年4月に検査対象の月齢を引き上げるなど、BSE対策を緩和した。ところが、その直後の4月9日、食品安全委員会は、検査対象の月齢をさらに48カ月超に引き上げる意見募集を開始した。引き上げの時期は7月を考えているようだ。
日本はBSEに関して、国際的には「管理された国」扱いとされている。さらに5月に、国際獣疫事務局(OIE)の総会が開かれ、そこで「リスクがない国」(いわゆる清浄国)と認められることが確実な情勢となっている。そうしたことも、最近の政府の動きの背景にはあるものと思われる。
4月に検査対象の月齢が引き上げられた後も、全国の地方自治体では、相変わらず全頭検査が続けられている。検査のための厚生労働省からの補助金は、4月以降も3月までと変わりなく、生後20カ月超を対象に出されている。ところが、厚生労働省は、支給対象を生後48カ月超にして、補助金を大幅に絞り込むことを検討しているという。
福岡市が、25年度について試算したところ、これまでのように全頭検査を続けるとすると、対象は2万1,000頭、費用は1,300万円だが、検査対象を生後48カ月超に限定すると、対象は5,500頭、費用は340万円になるという。対象となる牛の数、費用ともに約4分の1規模となるという計算だ。
全頭検査に関しては、地方自治体の負担という問題がある。しかし、緩和を進めていく上でも、また、食の安心・安全という面からも、それよりも科学的な妥当性などについて、多少時間もかけつつ、十分納得がいくような説明を行なっていくことが重要である。厚生労働省や農林水産省は、全国一斉に全頭検査をやめる方向で考えているようだが、"急いで事を仕損じる"ことのないよう願いたい。
▼関連リンク
・食品安全委員会が実施中のパブリックコメント「牛海綿状脳症(BSE)対策の見直しに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集について」(5月8日まで)
・国際獣疫事務局(OIE)による「無視できるBSEリスク」の国のステータスについて(農林水産省)
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