ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

経済小説

「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(32)
経済小説
2013年4月22日 07:00

<経営会議(30)>
 小林取締役の話を聞いた常務の北野は、
「私はどのようなことになったとしても、残った取締役が一丸となれば、いろいろな問題は解決がつくので心配はないと思います。寧ろ、私共の意見に反対の皆さんが、仮にそういう事態に陥った場合には、ご協力いただいて一致団結してやれば、そんなに後のことを心配する必要はないと思います」
 と、妥協の余地はなくむしろ改革派に協力を求める発言をした。
 その言葉を受けて専務の沢谷は、
「小林取締役が言う1年後どうだ、こうだというのは、もう全然考えられないことです。そういう任期途中でと言うことは、かえって大変な問題が起きます」
 と発言し、続けて業を煮やしたように甲高い声で、
「議長、意見が堂々巡りですので、このくらいにして決を取ってもらった方が良いと思います」
 と述べ、質疑を打ち切って採決することを谷野に迫った。

 3号議案の審議に谷野頭取罷免の動議が提出され、改革派と守旧派との攻防が続いていたが、時間も押し詰まりいよいよ採決を迎える時が来た。この会議に出席しているのは、議決権のある11名の取締役、議決権はないが出席が認められている大沢監査役、特別にオブザーバーとして出席が認められている谷本相談役の13名であった。

 相談役の谷本は2時間近くにおよぶ谷野頭取罷免の攻防をじっと聞いていたが、自ら発言することはしなかった。あたかも徳川家康のごとく、この論戦の場を関ヶ原の戦いと見做し、東軍の総帥として、誰が一番手柄を上げるかを静かに見定める立場にいた。
 そのためこの論戦に積極的に加わっておかないといつ退任を迫られるかもしれないとの思いが守旧派のメンバー5名にはあり、専務の沢谷、常務の吉沢、北野、川中、取締役の古谷たちは必死であった。この論戦でのちに論功行賞の栄誉を得たのは常務の吉沢で、6月の株主総会後に専務取締役に引き立てられることになる。
 また最年少の取締役である古谷は、谷本に次期頭取の指名を受けていることもあり、進退を気にする発言をしなくても良い特別の地位にあった。そのため古谷は総大将然とし、大胆な発言を繰り返し谷野と対峙する姿勢を誇示した。

 一方西軍の改革派は総大将の谷野頭取と、それを擁護する専務の石野、取締役の梅原、木下、小林の5名であった。
取締役11名のうち、態度を表明したのは改革派5名と、守旧派5名の同数であった。残る1名は、任期途中の退任を表明している代表取締役会長の栗野和男会長であり、キャスティングボートを栗野が握ることになった。論戦に一切発言をせず、ただじっと聞いていた栗野の態度表明いかんによって、3号議案の成否が決まることになり、その去就に注目が集まることになった。

(つづく)
【北山 譲】

≪ (31) | (33) ≫

※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


※記事へのご意見はこちら

経済小説一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
流通メルマガ
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル