<経営会議(32)>
議長の谷野は、
「沢谷専務より質疑打ち切りの話がありましたが、他に何か言い足りないことがあればお聞きしますが、なければ採決に入りたいと思います」
と、自らの再任を問う運命の時が迫ったことを告げた。
議長の谷野は、
「第3号議案の取締役選任について動議が出ました。私を含めた9名の取締役候補を提案したところ、私を除いた他の8名については異議なしと言う結論をいただきました。私については沢谷専務から再任否認の動議が出ましたのでその採決を取りたいと思います。その動議に賛同される方は挙手をお願いします」
と述べると、古谷取締役、川中常務、北野常務、吉沢常務、沢谷専務の5人が満を持していたように一斉に挙手した。
それを見て谷野は、
「動議に賛成の方は、古谷取締役、川中常務、北野常務、吉沢常務、沢谷専務の5名ですね。それでは動議に反対の方は挙手願います」
と述べると、小林取締役、木下取締役、梅原取締役、石野専務が手を挙げた。
谷野は、
「動議に反対の方は小林取締役、木下取締役、梅原取締役、石野専務の4名ですね」
と述べると、今まで一切発言をしなかった取締役会長の栗野が口を開いた。
「私はこれについては棄権させていただこうと思っています。私は退任する身ではありますが、とにかく維新銀行が、正正ときちんとやっていけるような、そういう体制を作ってほしいと思います。それしかありません」
と述べた。
栗野の発言を聞いて議長の谷野は、
「栗野会長から棄権の申し出がありました。ご発言された維新銀行の今後についてはそういうことに尽きると思います」
と述べた。
続けて谷野は、
「経営会議の構成メンバーは私を含めて11人ですが、私は利害関係人にあたりますので、10人が表決の対象者となります。先ほどの評決では5人が動議に賛成、動議に反対が4名。棄権が1名となります。経営会議の決議の方法については経営会議規程第4条の決議の方法に記載の通り、経営会議の決議は構成取締役の2/3以上の出席を要するということですから満たしております。そしてその出席取締役の過半数をもって決議するとなっています。11名ですが、私を除いて10名となり、その過半数と言うことは6名以上ということになり、5名では過半数になりませんので、この動議については一応5:4:1となり、過半数に到達せずということで、動議は否決されます。従って、午後取締役会がありますので、同じように取締役会でこれを諮ることになると思います」
と述べた。
※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。
※記事へのご意見はこちら