福岡市・天神で4月20日、復活を賭けた2つのイベントがあった。1つは、民主党の海江田万里代表の街頭演説、もう1つは福岡市役所西側ふれあい広場リニューアルのプレイベントだ。昨年12月の総選挙で大敗した民主党、公共事業をめぐる癒着・腐敗が相次いで明るみに出た福岡市の高島宗一郎市長、それぞれの浮沈を賭けた再スタートだったが、あいにくの雨で前途多難を予感させた。
<悪いことにノーと言う>
海江田代表は天神ツインビル前で、ズバリ「もう1度チャンスを与えてください」と訴えた。「党首討論を通じて、2つのことを感じた」として、「本当に助けを求めている人々、ホームレス、年金生活者、中小企業の経営者、若い失業者の声を吸い上げる政治が安倍晋三首相にはない。日本維新の会の石原慎太郎共同代表、みんなの党の渡辺喜美代表も安倍首相と議論したが、安倍自民党内閣に正面から対決し、悪いことにはっきりノーと言う政党は民主党しかない」と力説した。
「参院選をスタート台にして必ず政権与党に返り咲く。手を差し伸べてもらいたい人のために政治をやる。このことを福岡の人にお約束したい。もう1度チャンスを与えてください」と呼びかけた海江田代表。「雨天の友、厳しい時に集まってくれるみなさん、叱咤激励、意見を言ってください。みなさんの力でもう1度政権与党の座につかせてください」と嘆願調だった。
夏の参院選福岡選挙区に民主党公認で立候補を予定する野田国義氏も演説し、「これからどんどんバブルが広がっていく、格差が広がる。そこ(格差)に光を当てていく」と述べ、「(安倍内閣は)人からコンクリートへ転換させようとしている」と批判。「政権交代可能な政党が必要だ。民主党を政権交代可能な政党に今一度復活させよう」と訴えた。
海江田代表の遊説は、党改革創生本部の全国行脚の一環。連合福岡役員との意見交換もあった。
<人気だったのはアイドルとマルシェだけ?>
同じ時刻、わずか100メートル離れた市役所西側ふれあい広場では、福岡市が整備に約1億5,500万円かけたリニューアルを記念してイベントが開かれていた。屋根付の移動式ステージを備えた「都心のにぎわいづくりの空間」に整備したもので、市が利用しない期間は、民間事業者が運営し、民間に貸し出す。
20日がプレイベント、21日がオープニングイベント。地元アイドルグループが出演するステージライブや、地場食材の生産者らが直接販売する「ふくおかマルシェ」の出店もあり、参加者でにぎわった。
初日は、雨のため人出はまばらだったが、ステージにお目当てのアイドルが登場すると観客の熱気は急上昇。専門学校生(19)は「一生懸命さがたまりません」と、冷たい雨など気にも留めていなかった。
21日は、前日の雨と打って変わって晴れ空が広がった。
高島市長は「2週間くらい前から今日の天気を気にしていた。今日はオープニングに合わせて天気も変わって、気持ちのいいお天気のもとでオープニングを迎えることができた」とご満悦の様子。オープニングセレモニーのあいさつで、「このステージは、天神の中心だけではなく、九州のにぎわいの中心。通常はただの空間になっていてもったいない。ここにステージ、屋根を整備することによって、ここ福岡から文化を発信してもらいたい」と呼びかけた。
高島市長には、「市長の次は国政を狙っている」という噂がしきりに流れている。無難に任期を務め、「カワイイ区」や「オープントップバス」や「市役所前広場リニューアル」など、福岡市をPRしたという形だけの"実績"を残そうというのでは、困るのは市民だ。
"華々しく"転出する前に、市顧問のかかわった選定疑惑や実行委員会方式での市役所とメディアとの癒着など行政の腐敗について市民に説明するのが筋である。民主党は昨年の総選挙で下野する直前の昨年11月、「政策進捗報告会」という名の「おわび行脚」をして、国民への説明責任を果たした。結果として選挙で負けたとはいえ、さすが「政権政党」「責任政党」である。説明責任も果たさない政治家には「次のチャンス」は訪れない。高島市長は覚悟を固めるときである。
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