福岡県や熊本県などの小中学校を中心に約1,800校が緊急連絡として利用している「学校安心メール」がシステム障害のために、4月9日以降、利用や登録ができなくなっていたことがわかった。現在部分的に復旧しているものの、新規登録は制限され、回復するのは4月23日から「4~5日要する見込み」とされる。同メールシステムを提供しているのは、(株)テクノミックス(本社・熊本県益城町、寄元正義代表)。同社は、大気環境情報メールなども配信している。
同社が12日に出した「お詫びとお知らせ」によると、「始業式や、入学式などの行事が重なった関係だと思われますが当社の想定より、例年になくはるかに多い(保護者様や、学校関係者様からの)アクセスが殺到」(原文のママ)したためとしている。
福岡市内では、入学式が小学校は11日、中学校は10日に開かれ、その際に保護者に緊急メールの登録案内が配布された。このため、アクセスが集中し、不安を抱えて入学した新1年生の保護者のほとんどは登録ができない状態になった。
登録した人への配信テストを20日前後に送る予定にしていた学校も多く、システム障害の結果、配信テストが5月中旬となった学校もあり、新学期・新年度の1カ月間以上も緊急メールを運用できない事態に見舞われた。
中学1年生の子を持つ親(50)は取材に対し、「新1年生なので、学校からの緊急メールの登録ができないのは不安。何回登録メールを送っても送信エラーになるし、業者の問い合わせ先に電話をしてもつながらない。業者のホームページを見ても、障害の発生のことは何もなかった。業者は都合の悪いことは隠し続けていて、『安心』などといって無責任です」と語った。
福岡市教育委員会の緊急メールなどは、今も新規登録ができない状態だ。市内の学校の児童・生徒数は約11万人だが、登録数は3万5,000件にとどまっている。
市教委は、NET-IBの取材に対し、「大変困っている。業者には早い復旧をお願いしている。業者と協議して2度と起こらないように、しっかりやっていきたい」と答えた。
市教委には4月10日、業者から「4月9日夕方に障害が発生した」と連絡があった。その場で「早く連絡ください」と注意したところ、業者は「早急に復旧できると見込んでいた。復旧に努めていた」と説明したという。その後も復旧せず、4月12日になってようやく「4月中の登録を控えるように」と書かれた前記「お詫びとお知らせ」が業者からあり、市教委としてホームページに掲載した。
一方、障害を起こしたテクノミックスは、広報にも問題がある。
テクノミックスのホームページには、4月22日現在、ニュースリリースにもトップページにも前記「お詫びとお知らせ」はおろか、システム障害発生について告知が掲載されていなかった。23日に掲載開始された「システム障害の発生について」には、5つのシステムのうち1つが「障害が発生しシステムを停止中」「ご利用中の学校様には大変ご迷惑をお掛けし申し訳ございません。回復には4~5日を要する見込みです」とある。
ところが、保護者は、前述の親のように、システム障害発生を知らされないままになっていた。テクノミックスの前記「お詫びとお知らせ」文書が福岡市教育委員会や学校管理者向けに送られた12日は金曜日であり、学校にもよるが、保護者への連絡は15日以降にならざるを得なかった。そのため、週末に登録しようとしても登録できない保護者が多数いたとみられる。
保護者からは「自社ホームページで障害発生を告知しないのはおかしい」「なぜすぐにホームページにお詫びを載せないのか」と憤る声が聞かれ、業者の対応への批判があがっている
| (後) ≫
▼関連リンク
・(株)テクノミックス
※記事へのご意見はこちら