<「あたりまえ」の弊害>
NPO法人「人間賛歌」理事長の相良五郎氏がうつ病の要因子と考える「思考障害」。これを取り除いた後、「思考不全(うつ病)」で苦しんでいた人の思考回路は、とてもシンプルな状態になるようだ。といっても、うつ状態にない人たちと同じように情報を受け容れられるようになるだけなのだが、これが本人たちにとっては"有り難い"。混乱しまくった思考回路によって心に溜まってしまった不安や恐れをすっかり吐き出した状態だから、周囲を落ち着いて見渡せるし、新しい情報を取り入れる気持ちにもなれる。
この時期を待って相良氏は、「ありがとう療法」を行なう。これは認知行動療法のひとつで、思考障害の改善や再発防止に役立つ。思考回路がシンプルになった人たちは、それ自体の有り難さが身にしみているためか、この療法が素直に心に届くようになるようだ。逆に、まだ思考障害に振りまわされている状態だと、療法の意図がうまく伝わらない。
このプロセスの文面化には多くの文字数を要するので、ここでは「ありがとう療法」について深くは触れない。ただひとつ、「ありがとう」に対する考え方、「あたりまえ」という思考障害がどれだけ曲者なのかを、相良氏の資料のなかから推測してみる。
相良氏の資料のなかに、こんな記述があった。
自意識(思考)の「あたりまえ」とは
・無意識から情報を取り入れ、何も確認せず「直感」で判断する。
・何事も自分の「利」になる身勝手な判断の仕方・・・・・・利己的な考え方。
・将来を想像や空想で身勝手な「物語」を作って考える。
・欲が深く「見返りを求める」考え方。
世間には様々な情報が飛び交っている。そのなかには悩みを改善させるために役立つものもちゃんとある。しかし「あたりまえ」という思考障害を抱えたままでは、せっかく良い情報を得ても、意図を間違えて捉えてしまうのではないか。それこそ自分の都合の良いように解釈し、「結局効果がないじゃないか」と、世の中に対する怒りを溜め込んでしまうかもしれない。だから、思考障害を自分でコントロールできない場合は、きちんとした指導者のもとで、取り除くことが大切になる。
<地域密着の「駆け込み寺」を作る!>
心の専門家が地域に門戸を開くことは、とても大切なことだ、と考える相良氏は1991年から、精神障害者福祉法の制定に向け、運動を続けてきた。福祉法の制定と同時に借金を重ね、各地に社会福祉法人を設立し、精神障害者の自立援助に尽力してきた。
その相良氏が、今、また新しい形の支援施設を作ろうとしている。若い士業と協力しあって障がい者の救援指導に当たる地域密着型の心の駆け込み寺「健心塾」だ。カウンセリングを行なう過程で、何人もの相談者たちが、ひきこもり、ニートなどのほか、家庭内暴力、反社会的行動に陥って、社会的生活を営めなくなっている状態に接してきた。せっかく思考不全を取り除いたのだから、その後、きちんと社会復帰して欲しい、という相良氏だが、うつ病が国を挙げて取り組まねばならない状態にまで深刻化している現代、多くの人々と協力しあって事を進める必要性を実感しているという。
「健心塾」では、相良氏による「さがら療法」に、弁護士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、不動産鑑定士、土地家屋調査士などによる社会的問題の解決に向けたサポート体制「健心塾を支える会」を併設。障がいから立ち直ろうとする人々の就労支援までを行なう。「今、福岡市内に設立準備中です。これができ次第、北九州、筑豊、筑後各地区、そして他県へも次々と設立していきます。ぜひ若手の士業の方々の協力を仰ぎたいです」と相良氏。これが就労支援などで地域活性化にも繋がるのではないかと期待も寄せている。日本人の心が健康で強くなるように、「健心塾」で多くの支援者と手を携えあうことが、相良氏の望みだ。
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