＜九州一円に倉庫を持って、常に大量の在庫を確保＞
　和洋紙の販売店としてスタートして50年以上、今や紙の専門商社として完全にその基盤を固めた（株）網中。同社の躍進は紙＝統制品との概念により、製紙メーカー、売買、顧客のルーチン取引が根強く残る業界に、いち早く風穴を開けたことで始まった。

　「紙は決まったルートでしか売れない、買わないという独特な縛りがありました。ところが、川下の印刷業界は不況による競争激化で、コストダウンを図らないと生き残れなくなったわけです。そこで、当社は20年ほど前から他社に先駆け、海外メーカーから直接買い付けた価格の安い紙を提案しました。すると徐々に取引が増え、次第に同業他社との差がついていきました」と語る網中裕城社長。

　海外メーカーには日本のような取引慣行はないため、商社が必要とすれば販売するのは厭わない。つまり、同社にとっては海外製品の扱いで価格競争力を持ったことが、次へのステップに上がることを容易にしたのである。
　ただ、当初は品質も低かったため、同社が顧客の反応をフィードバックしていた。メーカーも品質改善に取り組み、現在では国産と比べても遜色のないものになったとか。すでに日本で取り扱われる紙の25％は外国製で、同社でも海外メーカーの製品が３割を占めている。
　しかも同社は、集積容量6,000トンの本社倉庫のほかに、福岡、山口、大分、鹿児島などに2,500～8,000トンの倉庫を持つ。莫大な固定費はかかるが、その分あらゆる紙をいつでも顧客に提供できるわけだ。

　また、欧米が不況のときには海外メーカーの在庫がダブつき、紙の相場価格も下がる。そのため、これだけのキャパシティがあれば円高メリットを追い風にして、安いときに大量の買い付けが可能になる。円が75～125円と半分程度になったことで、粗利益は大幅に伸び、収益が改善されたという。これらも同社にとって大きな強みになっている。

＜東京、大阪に積極展開する、販路拡大と情報収集が奏功＞
　一方、IT技術の進歩により、紙を取り巻く環境は大きく様変わりした。とくに、印刷業界では「ウェブの浸透で需要が減っていくのでは」との意見が少なくない。しかし、同社にとっては売上はほとんど変わらないどころか、むしろ少しながら増えているという。
　これは、海外メーカーの製品を提案するのと並行して、印刷会社以外の取引先を増やしていったからだ。これらは紙そのものを使用する官公庁や学校、商品として販売するディスカウントストアなどで、主にコピー用紙が格段に伸び、全体の売上に占める割合も増加傾向にあるという。

　さらに東京、大阪には積極的に支店を開設。九州とは違う新聞社や出版社への販路を開拓したことも、貢献している。「出版社も大量に購入していただけますし、九州にはなかなかない取引先です。多少無理をしてでも大都市圏に進出したことが奏功しました。逆に、東京や大阪には地方都市では得られない貴重な情報を収集できるメリットがありますから、入手した情報は全社員が共有して営業に役立てるようにしています」（網中社長）。

　ウェブ浸透による印刷需要の減少という問題も、「再現性が違うので棲み分けるのでは」というのが網中社長の見方だ。たしかに、IT関連の商材が増えればその分、情報発信用の印刷物も増えているのではないかと考えられる。
　サイトにアクセスし、ほしい情報を探すには時間がかかるが、チラシなら両面にすべての情報が網羅されている。だから、編集能力の違いで残る媒体なのかもしれない。むしろ、売上が減少している印刷会社は、営業企画力の低下に原因があるようだ。積極提案と販路開拓、情報収集を行なう同社との力の差は、歴然としていると言えるだろう。

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：網中　裕城
所在地：北九州市小倉北区東港2-5-1
設　立：1958年4月
資本金：3,050万円
ＴＥＬ：093-561-4111
ＵＲＬ：http://www.aminaka-group.co.jp

※記事へのご意見はこちら