(株)環境デザイン機構 代表取締役 佐藤 俊郎 氏
福岡市住宅供給公社 理事長 瀧口 研司 氏
(株)シェルフアソシエイツ 代表取締役 坂口 敬司 氏
福岡は歴史的にアジアと日本の玄関を担ってきた。平安時代には鴻臚館が設置され、外交の要衝として、大いににぎわいを見せてきた。ところが近年、その役割は薄まってきている。未来に向けて福岡の存在感をいかに示していくべきなのか。福岡市住宅供給公社理事長・瀧口研司氏、(株)環境デザイン機構代表取締役・佐藤俊郎氏、(株)シェルフアソシエイツ代表取締役・坂口敬司氏に、福岡の発展の可能性について、うかがった。
<人が集まるまちづくりをアジアと連携を強化せよ>
――福岡は地政学的にアジアとの玄関口を担ってまいりました。近代に入り、その役割が薄まってしまいましたが、ここにこそ福岡の発展のカギがあるように思います。
佐藤 実は、先日、福岡デザインリーグ(福岡のデザインを振興していくためのNPO法人)の会合がありまして、その席にも韓国釜山から15名出席してくださいました。長年、韓国にとって、日本はデザインの目標ととらえてくれていたようで、多くの若者が九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)などで学び、技術を携えて本国へ帰っていきました。そのような方々の多くが韓国でデザインセンターなどの幹部を占めるようになり、徐々にデザインの水準が上がってきたように感じています。
――韓国にとって、日本は追い付くべき存在だったのですね。
佐藤 そうです。20年ほど前まで、グラフィックにせよ、プロダクトにせよ、韓国のデザインはまだつたないものでしたし、多くのデザインのコピーがありました。その程度の認識だったのですが、今では韓国のデザイン力は日本と同等、場合によっては追い越されているものもあるように感じます。韓国では、ソウルや釜山などにデザインセンターを設置し、積極的に育てる工夫をしているように思います。その国を挙げての努力が、今の韓国のデザインに活かされているのだと感じますね。
坂口 日本は能力を国が育てる、という発想が弱いのかもしれませんね。高い能力を持った人も企業に埋没してしまって、自由が利かない状態になってしまっているように思います。
佐藤 そうですね。リーダーの育成と、それによる裾野の広がりという点では、日本は遅れているように感じます。
――行政の姿勢が問われているのかもしれませんね。
瀧口 リーダー育成は重要だと思います。ただ、行政のできることにも限りがあるのも事実です。
たとえば、"ハコモノ"は批判の対象になっていますが、韓国のデザインセンターのように象徴的な建物をつくって、そこを才能の集まる場にすることは大変意義があることだと思います。
――それは間違ったご指摘ではないと思います。大学の教授らが、一所懸命に才能育成をしようとしても、なかなか発展が見られないという事実もあります。シンボリックな建物を設けて、そこで交流が生まれる仕組みは必要ですね。
瀧口 福岡市は、目標とする都市像として、活力あるアジアの拠点都市というものを挙げていますし、アジアとともに発展していくことの重要性は十分認識しています。
留学、ビジネス、観光を通じて、福岡を発展させたいというのは、至上命令の1つです。港湾施設も着実に整備されていますし、大型クルーズ船の博多港への寄港も増加してきています。中央ふ頭のコンベンションゾーンも充実させてきています。こういった施設が拠点機能を発揮できるように、ソフトの充実も考えていかなくてはいけませんね。
坂口 アジア諸国の目は、すでに広く世界に向いています。再び日本に戻すためには、何らかの魅力がないといけないでしょうね。
(つづく)
【文・構成:柳 茂嘉】
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