<経営会議(37)>
動議を提出した専務の沢谷は、
「大沢監査役につきましては98年から2期6年の間、監査役を立派に務められました。先ほど話し合った谷野頭取の取締役再任における議論においても、私共の意見とは見解は異なるにせよ、維新銀行のために良かれとの思いを熱心に説かれました。その点に関しては心から感謝申し上げます。しかし再任となれば10年間の長期になりますので、今回の任期満了を機に後進に道を譲られては如何かと思います」
と提案した。
沢谷の発言を受けて議長の谷野は、
「有難うございました。只今沢谷専務より動議が出されました。先ほど3名の再任をお諮りいたしましたが、そのうち大沢監査役を除く下田隆氏並び木村賢一郎氏の2名の監査役選任についてはご異議ございませんか」
と問うと、出席者全員から、「異議なし」の声が発せられた。
その声を聞いて谷野は、
「大沢監査役に代えて、黒部亘氏の新任監査役選任の動議が沢谷専務より提案されましたので、ご意見等をお伺いしたいと思いますが、特別にご意見がなければ時間の関係等もあり、採決に入りたいと思いますが如何でしょうか」
と提案すると、誰からも異論は出なかった。
少し間を置いて谷野は、
「それでは大沢明之氏の再任拒否の動議に賛成の方は挙手をお願い致します」
と述べると、谷野頭取の再任を拒否した時と同様に、沢谷専務、吉沢常務、北野常務、川中常務、古谷取締役が挙手した。
それを見て谷野は、
「沢谷専務、吉沢常務、北野常務、川中常務、古谷取締役の5名の方が再任を拒否されました。続いて大沢明之氏の再任に賛成の方は挙手をお願いします」
と述べると、谷野の時と同様に、広野専務、梅原取締役、木下取締役、小林取締役の4名が手を挙げた。
すると谷野は、
「私も賛成しますので大沢氏の再任に賛成の方は、私谷野と、広野専務、梅原取締役、木下取締役、小林取締役の5名となります」
と述べると、会長の栗野は、
「私は棄権させて頂きます」
と発言した。
それを受けて谷野は、
「大沢明之氏の監査役選任に対する反対の動議については、賛成5、反対5、棄権1となり過半数に達しませんでしたので、4号議案の監査役選任の件は、取締役会議で採決されることになります」
と発言し、第3議案の取締役選任の件、および第4議案の監査役選任の件については、共に取締役会議での決議に持ち越されることになった。
※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。
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