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濱口和久「本気の安保論」

国民の命を救うドクターヘリの整備を急げ!
濱口和久「本気の安保論」
2013年4月30日 16:00
拓殖大学客員教授 濱口 和久

<日本のドクターヘリの現状>
sora_15.jpg 2007(平成19)年6月の通常国会で「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」が成立したことを受けて、命を救うヘリコプター(ドクターヘリ)が全国へ配備される体制が整った。ドクターヘリとは、救急医療用の医療機器などが装備され、医師と看護士などが同乗し、救急現場などに向かい、医療機関に搬送するまでの間、患者に救急医療を行なうことのできる専用のヘリコプターのことを言う。

 ドクターヘリは、岡山県で導入されて以来、13(平成25)年4月2日現在、専用機を運用しているのは、1広域連合31道府県を補助主体とする37事業がある。北海道は3機、青森県、千葉県、静岡県、長野県では2機が運航されている。兵庫県、京都府、鳥取県の3府県が共同運航していた公立豊岡病院の事業は、11(平成23)年4月より3府県が参加する関西広域連合に移管された。

<ドイツから生まれたドクターヘリ>
 海外で最初にドクターヘリが導入された国はドイツである。ドイツの高速自動車道アウトバーンでは1960年代末期、毎年2万人を超える人命が交通事故で失われていた。これを少しでも減らしたいとして、70年11月から始まったのがドイツ自動車連盟(ADAC)によるヘリコプター救急である。その運航形態は、拠点病院から半径50キロ、飛行距離にして約15分相当の地域を担当し、ヘリコプターは原則として、出動要請から2分以内に医師とパラメディク(救急救命士)を乗せて離陸する。患者は15分以内、平均8分で医師と出逢い、その場で救急治療を受けることができる。

 また、85年にはヘリコプターの基地数は35カ所を数え、交通事故死は1万人余、すなわち15年間で半減した。そして東ドイツと統合した90年には38カ所となり、交通事故死者数は3分の1近くまで減少した。その他の国としては、スイス、アメリカ、フランス、イギリスなどが日本よりもドクターヘリの整備が進んでいる。

<ドクターヘリが割安>
 ドクターヘリ事業における費用対効果を見てみると、出動1件あたりの費用はドクターヘリのほうが救急車よりも大きいが、出動対象の重症度割合も大きく、救急車に比べてドクターヘリの出動効率が高いことが明らかにされている。
 さらに、全国50カ所にドクターヘリを配備した場合に必要な年間費用約100億円は、現在全国で運用されている救急車搬送にかかる費用約5,600億円のわずか1.8パーセントである。ドクターヘリは非常に経済的負担が大きいとの先入観があるが、ドクターヘリの運航費用は救急車搬送に要する費用に比べて決して大きいものではない。
 ドクターヘリが導入されている日本医科大学千葉北総病院に搬送された交通事故患者70人(ドクターヘリ26人、救急車44人)を対象に、入院日数および入院点数(診療報酬)について、ドクターヘリ搬送群と救急車搬送群とで比較したデータがある。救急車搬送に比べて、ドクターヘリ搬送では入院日数が平均で17日短く、入院点数も平均11万点低い結果が得られている。すなわち、ドクターヘリの導入により、交通事故患者に対する医療費を削減する効果を生んでいる。

<東日本大震災でも活躍>
 東日本大震災では、全国からDMATとドクターヘリが花巻空港に設けられた広域拠点に集まり、そこを拠点にして3カ月間にわたって広大な被災地からの患者搬送を行なった。また、日本全国へのドクターヘリの配備は、無医村・無医地区においても救急医療の恩恵を平等に受けることができる点で、僻地医療対策にも繋がる。
 救命救急から僻地医療まで、国民の様々な救急ニーズに的確に応えられるヘリコプター救急システム(ドクターヘリ)の構築は、まさに先進国の必須のインフラでもあり、国民の安心・安全・生命を守る上で優先順位の高い医療政策の1つなのである。

<プロフィール>
hamaguti_p.jpg濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ


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