多くの日本の大学が国際性を養う必要性を口にしているが、現実には、欧米やアジアの一流校にはリードを許している。今後、日本がグローバルに戦っていくために、大学の改革は欠かせない。
学生たちの学ぶ意欲の向上も必要だが、教育する大学の進化も求められる。グローバル社会のなかで日本が持続的に一流国であるために、教育の場で求められている変革とは何か。日本の大学はどう変わるべきか。日本だけでなく、アメリカ、ヨーロッパなどのさまざまな大学をめぐり歩いた経験を持ち、大学教育に詳しいジャーナリストの友野伸一郎氏に聞いた。
<授業改革の必要性>
大学の教育力とは、「学生が大学にいる間に、何をできるようになったか」だと、友野氏は言う。以前は、教授が授業で何をしゃべったか、それを学生が聞いていたかどうかを半年に1回のテストでチェックする、というのが一般的な「大学の講義」だった。「知識の量と、その正確さ」が問題とされていたが、時代は変わった。
「変革が進んでいる大学は、学習者中心の教育に変わってきている。変わらなくては、淘汰される」と友野氏は言う。
<研究重視の日本>
広島大学が数年前に日本の大学教授たちに、教育と研究のどちらを重視しているかというアンケートを取った。教授陣の65%程度が「研究を重視している」と回答。「これがアメリカだと、50%を切る。日本の大学の教員の採用基準は、主に"研究実績"で決まることが多い。論文をどれだけ引用されたかなどが、基準となっている」(友野氏)。日本の多くの大学がこれまで、学習者(学生)をいかに育てるかという部分を見てこなかった。
70年代~80年代前半までの大学進学率は20%程度だったが、この20年で格段に上がり、今では50%程度の学生が大学に進学する。いわば、"大学生"の希少価値が下がっているなかで、大学の教育の質はそれほど変わらず、以前の体質のままなのだ。
「研究実績が重視されるので、自分で書いた論文を自分で引用して、引用された数を稼ぐような教授もいる。不思議なことに、論文の自己引用は、引用された数にカウントされます。教授陣の意識が、研究重視から教育重視に変わっていかないと、大学改革は進まない」と、学習者側を向いた教育に変えるべきだと友野氏は指摘した。
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<プロフィール>
友野 伸一郎(ともの・しんいちろう)
1953年広島県生まれ。東京外語大学卒業。ジャーナリスト。大学教育に詳しく、著書に「対決!大学の教育力」(朝日新聞出版社)など。06年より河合塾の「教育力調査プロジェクト」に参加し、偏差値だけではない大学選びの指標づくりに取り組んでいる。
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